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  • 現場から経営へ、企業の持続的成長を支えるSCMの今

今後のサプライチェーンには経営指標と現場のKPIの紐付けが不可欠に

伴走型コンサルティングでKPIツリーをデジタル化し現場のDXを推進

DIGITAL X 編集部
2024年10月9日

サプライチェーンのさらなる変革を実現する一手としてNTTデータが推進しているのが「KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)ツリー」のさらなる活用である。経営指標と現場のKPIをいかに紐づけるのかが問われ、そのためのデジタル化と可視化が不可欠だからだ。加えて最近のサステナビリティ経営に向けて、地球環境保護への貢献度といった“非財務的価値”の融合も打ち出している。その実行に向けては、大手製造業を中心にDX(デジタルトランスフォーメーション)を対象にした伴走型コンサルティングの一環として支援策を提供する。経営と現場KPIを紐づける重要性について、同社キーパーソンに聞いた。

 「日本企業はこれまで、サプライチェーンにかかわる各部門が、それぞれの現場に閉じた形でKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を設定し、その達成を追求してきました。すると例えば、在庫回転率が悪く、在庫が滞留しているにもかかわらず、生産現場では歩留まりを改善し続け、結果として企業の“稼ぐ力”を示す指標となるROIC(Return On Invested Capital:投下資本利益率)やキャッシュフローを悪化させてしまうリスクがあります」

 NTTデータ コンサルティング事業本部 会計・経営管理ユニット マネージャーの宮原 孝友 氏は、日本企業のSCM(Supply Chain Management:サプライチェーン管理)の実状を、こう指摘する−(写真1)。そうした実状の解決策としてNTTデータが打ち出すコンセプトが、「KPIツリー」のデジタル化・可視化である。経営指標を販売(営業)や調達、在庫管理、生産といった各現場が掲げるKPIに紐づけたうえで可視化し、それぞれの日々の進捗をモニタリングしながら“経営の意思”を反映させた業務改善を図っていく。

写真1:株式会社NTTデータ コンサルティング事業本部 会計・経営管理ユニット マネージャー 宮原 孝友 氏

 NTTデータ コンサルティング事業本部 サプライチェーンユニット シニアマネージャーの大居 由博 氏は、「KPIツリーのデジタル化・可視化により、有事への対応や現場の意思決定に対し経営の意思を反映できるようになるだけでなく、経営上、インパクトが小さく、無駄なKPIを排除するといった効果も期待できます」と付け加える(写真2)。

写真2:NTTデータ コンサルティング事業本部 サプライチェーンユニット シニアマネージャー 大居 由博 氏

生成AIを使い改善すべきKPIの提示・提案を可能に

 KPIツリーをデジタル化・可視化する仕組みは、サプライチェーンのスマート化を支援する伴走型のコンサルティングサービス「iQuattro」の機能の1つとして提供する。サプライチェーンを構成する企業や組織間での横断的な情報共有、生産計画の最適化、物流トレーサビリティの確立、在庫バランスの最適化などに取り組む中で、KPIツリーのデジタル化・可視化を推進し、経営指標と現場業務のKPIの紐づけや、現場におけるKPIの進捗を経営指標と連動させた自動計算を可能にする(図1)。

図1:デジタル化によるKPIツリーの可視化

 KPIツリーをデジタル化・可視化する仕組みに対しNTTデータは、生成AI(人工知能)技術も利用する。経営指標の進捗改善に向けて、現場の、どのKPIを改善するのが最も有効かを生成AIが自動で分析し提示する。

 「KPIツリーを可視化しただけでは、現場の、どのKPIを改善するのが経営上にプラスになるのかは分かりづらいといえます。生成AI技術を使い、チャットベースの対話形式による利用者からの質問に対し『どのKPIの数値を、どの程度改善すれば良いか』を提案・提示する機能の開発を進めています」と大居氏は話す。

 さらに、KPIツリーのデジタル化・可視化機能と併せて、KPIの見直しやそれに伴うチェンジマネジメントをサポートするためのコンサルティングサービスも展開している。

 「KPIツリーをデジタル化し、経営面でプラスのインパクトが強い現場のKPIや、その進捗を可視化すれば、業務の現場は『自分たちは何をどうすれば、経営に大きく貢献できるのか』を明確に捉えられるようになります。経営にとって重要なKPIの達成にリソースを集中的に投入できるようになるうえ、経営に対する自分たちの貢献度も可視化できるのです。こうした可視化の効果をテコにしながら、現場業務の変革、あるいはチェンジマネジメントを推し進めていくのです」(大居氏)