- Column
- 生成AIがもたらすパラダイムシフト ~業務効率化から顧客体験向上まで~
クラウド、ローコード、生成AIの3技術の組み合わせが開発プロセスを一新する
「DIGITAL X DAY 2024」より、ROIT Microsoft事業部 代表取締役の柿崎 直紀 氏
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- ROIT
ウォーターフォール型のシステム開発プロセスには、さまざまな“非効率さ”が潜んでいる。その打開策として期待されるのが、クラウド、ローコード、そして生成AI(人工知能)の3つの技術である。クラウドやAIに特化したシステムインテグレーターであるROITのMicrosoft事業部 代表取締役 柿崎 直紀 氏が「DIGITALX DAY 2024(主催:DIGITAL X、2024年9月26日)」に登壇し、これら3つの技術を活用する意義と、具体的なアプローチについて解説した。
「請求書に備考欄を追加するなどロジックの変更が不要なシステム改修でも、システムインテグレーターに依頼すれば数百万円を請求されるケースがある。利用企業からすれば『それほど高額になるはずはない』というのが実感だろう。こうした状況を打開する“切り札”になるのが、クラウド、ローコード、生成AI(人工知能)の技術を使った開発プロセスの刷新だ」−−。ROITのMicrosoft事業部 代表取締役の柿崎 直紀 氏は、こう主張する(写真1)。
クラウドとローコードによるプロトタイプで要件への認識齟齬を改善
システムの開発や改修時の高額請求の背景には、「オンプレミスでのウォーターフォール型開発に潜む多様な“非効率さ”がある」と柿崎氏は指摘する。その1つが開発時に作成するドキュメント(文書)だ。
開発時にはまず、ドキュメントを中心とした要件定義と設計がなされる。だが、「完成形のイメージは言語化が難しく、発注元と発注先の双方が十分に意思疎通を図れないまま作業が進められるケースが大半だ」(柿崎氏)。その後、ドキュメントを基に開発が進められるが、受け入れ試験段階になって発注元が「イメージと違う」と指摘して問題が顕在化する。結果、「開発に要するコストと期間は当初見込みを超過し、発注元と発注先の双方ともが頭を抱える」(同)ことになる。
この状況に、クラウドとローコードを組み合わせれば、開発プロセスは、どう刷新できるのか。柿崎氏は次のように説明する。
「クラウドとローコードにより、実際に動くシステムを短期間に用意し、その画面やロジックなどを基に要件を詰めれば、発注元と発注先の間にある認識の齟齬を細分まで埋められる。ドキュメントによる要件定義と設計のプロセスを省けるため、早期に受け入れテストにまで漕ぎつけられ、発注元からの改善要望にも余裕をもって応じられる。用意するドキュメントは運用時に必要な最低限のものだけでよい。開発プロセスの効率を高め、開発コストと期間を圧縮し、顧客満足度の高いシステム開発への脱却が可能になる」(図1)
2016年、クラウドに特化したシステムインテグレーターとしてROITが創業した狙いも、「まさに、このビジョンの具現化にあった」と柿崎氏は説明する。
ChatGPTの併用で月150万円相当のコンサル業務が即座に完了
ROITが現在、力を入れているのが生成AI技術を使ったシステム開発のさらなる効率化である。柿崎氏は「単純作業にAI技術を適用すれば、人は付加価値が高い業務にのみ専念でき、エンジニアの報酬が向上し、システム業界の魅力も増し、ひいては優れたシステムが日本中に広がる世界が実現できる」という青写真を描く。ROITとしては、「生成AIにより開発プロセスを再デザインし、コーディング作業とドキュメント作成の時間を限りなく“ゼロ”に近づける」(同)のが目標だ。
そのためにROITは約半年をかけ、利用する生成AIをいくつも試してきた。最終的に採用したのは米OpenAIが開発する「ChatGPT」である。
その理由を柿崎氏は、「1ユーザー当たり月額25ドルと安価に利用でき、コーディングやドキュメント作成だけでなく、技術調査やマーケティング、営業資料などの業務にも応用できる。応用範囲の広さと回答の精度の高さでChatGPT一択になった。回答速度も速く、プロンプトによる学習を回避できるなどセキュリティも確保されている」と説明する。
パイロットプロジェクトとして、(1)設計書に基づくコード生成と(2)ローコードで開発した画面に基づくドキュメント(設計書)の生成に取り組んだ。前者では、「月単価60万円の開発者の作業が一瞬で完了するなど、ごく短時間でのコード生成と、プロンプトの工夫によりコードの質をさらに高められることを確認した」(柿崎氏)という。
後者でも、「ドキュメントの作成時間はわずかで、プロンプトの工夫によりドキュメントの質をさらに高められることを確認した。コンサルタントに依頼すれば月額150万円相当の作業が即座に完了する」と柿崎氏は話す。
現在は「生成AIを用いたシステム開発プロセス標準の策定を進めている最中だ」(柿崎氏)。既に進行中のプロジェクトに対しても、会議録からの要件定義書の策定や、生成AIによるコーディング、システムをベースとする各種ドキュメントの生成などに取り組んでいる。「そこで得られたノウハウの開発プロセス標準へのフィードバックも進めている」(同)とする。