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- 人とAIの協働が導く製造DXの勝ち筋 「Industrial Transformation Day 2025」より
鴻海(FOXCONN)、「3 + 3戦略」でICT分野の強みをEV、デジタルヘルス、ロボットに広げる
「Industrial Transformation Day 2025」より、FOXCONN 中央自動化技術センターの王 樹華 氏
EMS(Electronics Manufacturing Services:電子機器の製造受託)業界をリードする台湾の鴻海科技集団(FOXCONN TECHNOLOGY GROUP)は、顧客であるグローバルな電子機器メーカーのニーズに応えるため、自動化やスマート化に積極的に取り組み、製造プロセスの改革に取り組んでいる。同社 中央自動化技術センターの王 樹華 氏が弊誌主催の「Industrial Transformation Day 2025(2025年3月11日〜12日)」に登壇し、同社のデジタル化戦略と最新の取り組みについて解説した。
「DX(デジタルトランスフォーメーション)は選択肢ではなく不可避な発展の流れである。積極的にDXを推進する企業のみが将来にわたり業界のリーダーであり続ける」――。EMS(Electronics Manufacturing Service:電子機器の製造受託)大手である台湾の鴻海科技集団(FOXCONN TECHNOLOGY GROUP)の中央自動化技術センターの王 樹華 氏は、同社会長である劉 揚偉 氏の言葉を引用しながら、DXの必要性をこう説明する(写真1)。
台湾で1974年に設立されたFOXCONNの祖業は、コネクターなど機械部品の製造だった。そこから現在ではICT(情報通信技術)製品やハイテクシステムを提供するグローバル企業に成長した。2005年に「フォーチュン500企業」にランクインし、2024年には32位に位置した。2024年の収入は6兆8600億台湾ドル(約32兆円)だ。
現在は世界24カ国・地域に233の工場とオフィスを置き、世界のEMS市場において46.1%のシェアを持つ。顧客には、米Apple、米Amazon.com、米Cisco Systems、米Dell Technologies、任天堂、ソニーなど多くの世界的企業を抱え、各社の製品を製造している。
IoT基盤により製造工程をデータ化しデジタル経営とスマート製造を実現
現在の事業モデルについて王氏は「ICT顧客向けに加え、新分野としてEV(Electric Vehicle:電気自動車)顧客向けの設計・製造受託サービスを手掛けている」と説明する。
そのうえで成長戦略として打ち出すのが「3 + 3戦略」だ(図1)。「ICT製品をベースに、EV、デジタルヘルス、ロボットの3分野を注力事業に定め、AI(人工知能)、半導体、次世代通信の3大技術によって支える構想」(同)を描く。
FOXCONNの競争力は、その製造能力の大きさにある。世界40以上の工場、100万人の従業員、1800のSMT(Surface Mount Technology:表面実装技術)生産ライン、17万台のCNC(Computer Numerical Control:コンピューター数値制御)加工装置、10万台のロボットなどだ。王氏は「これらの設備から生み出される大量のデータストリームを活用することがDX戦略の核心にある」と強調する。
DX推進における鍵として王氏は「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)と、ソフトウェア、標準化、デジタル化、プラットフォーム化、スマート化」を挙げる。IoT基盤を通じて製造現場の各種設備からデータを取得し、デジタル管理基盤と連携することで「製品設計やサプライチェーンにおける意思決定の効率を高め、デジタル経営とスマート製造を実現している」(同)とする。
製造プロセスの細分化も特徴の1つで、ICT製品の製造工程をレベル0から11までに分類している。
具体的には、精密な金型加工のレベル0から始まり、部品や外装を製造するレベル1〜5、SMTを実装するレベル6、システムを組み立てるレベル7〜10、そして最終的な包装・出荷のレベル11までだ。王氏は「こうした工程の定義が、人材などリソースの配分や自動化ポイントの特定など、大量生産と自動化に有理に働いている」と説明する。
DXを支える組織体制も整えている。「DX専門チームを設置し、社内外のリソースを活用してスマート製造のスピードアップを図るためのキャンプを立ち上げている」(王氏)
その上で、PDM(Product Data Management:製品情報管理)と、ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)、MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)、QIS(Quality Information System:品質情報システム)の4大管理システムを統合する「デジタルマネジメントプラットフォーム」を構築している(図2)。