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- 今こそ問い直したいDXの本質
製品とサービスの関係にどんなパターンがあるのか【第14回】
製造業のビジネスとデジタルが結び付かないあなたへ

製造業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)が進展していないように見える要因としてこれまで、提供価値が“無形”か“有形”かに着目したうえで、製造業のサービス化では製品と組み合わせたサービスの提供が重要だと指摘しました。今回は、製品とサービスの間に、どのような関係性があるのかを深掘りしてみます。
「Product-Service Systems(PSS)という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。PSSは「モノではなくサービスを売る」というビジネスモデルを考えるための、製品とサービスの関係を統合的に扱うためのフレームワークです。
この形を統合的に説明しようという試みでは、産業生態学者のアーノルド・タッカー氏による2004年の論文『Eight types of product–service system: eight ways to sustainability? Experiences from SusProNet』が知られています。前回紹介した「サービスドミナント・ロジック」の発表と同じ年です。
製品とサービスの両方の性質を併せ持つビジネスがある
PSSの骨子は「製品とサービスの両方の性質を併せ持つビジネスが3カテゴリー、8パターン存在する」というものです。基本的な構図を示したのが図1です。左端が純粋な製品、右端が純粋なサービスになります。
この3カテゴリー、8パターンについて、タッカー氏の論文を抜粋しつつ筆者なりの解釈で説明してみます。
カテゴリA:製品志向
製品志向のPSSは、製品単独のビジネスではないにせよ、基本的に製品を販売することで対価を得ており、サービスは付帯的な位置づけです。
パターン1 :製品関連サービス=製品の利用に際してサービスを提供します。メンテナンス契約、融資、消耗品の補充、製品の引き取りなどです
パターン2 :アドバイスとコンサルティング=製品の効率的な使用方法について助言します。製品を使用するチームの組織構造に関するアドバイスや、製品を使用する工場のロジスティクス最適化などが相当します
カテゴリB: 利用志向
利用志向のPSSは、製品が中心的な役割を果たしますが、ビジネスモデルとしては製品を販売せず提供者が所有したままで、顧客が利用、あるいは多数の顧客がシェアします。
パターン3 :製品リース=製品を顧客に貸与し、製品の所有権は移行しません。提供者が所有権を持ち、メンテナンスや修理、管理に責任を持ちます。顧客は製品の使用料を定期的に支払います。通常は無制限かつ排他的に製品にアクセスできます。
パターン4 :製品のレンタル/シェア=リースと同様に製品は提供者が所有し、メンテナンスにも責任を負います。顧客は製品の使用料を支払います。リースとの主な違いは、独占して利用できず、他の人が順番に製品を使用できる点です
パターン5 :製品プール=レンタルと似ていますが、他の人が同じ時間に製品を使用することがあります
カテゴリC:成果志向
成果志向のPSSは、提供者と顧客が成果に対して合意するビジネスで、事前に決められた製品がある訳ではありません。
パターン6 :アクティビティマネジメント/アウトソーシング=企業活動の一部を第三者にアウトソーシングします。ほとんどのアウトソーシング契約には、サービスの質を管理するための成果指標が含まれているため、成果志向型サービスに分類されています。多くの場合、企業活動が劇的に変化することはありません。ケータリングやオフィス清掃のアウトソーシングなどが相当します
パターン7 :サービス当たり課金=多くの古典的なPSSの例が含まれます。顧客は製品を購入せず、使用量に応じて製品のアウトプットのみを購入します。よく知られた例は複写機のペイ・パー・プリントです。複写機メーカーはオフィスにおける複写関係のさまざまな活動(用紙やトナーの供給、メンテナンス、適切な場合の複写機の修理や交換)を引き受けます
パターン8 :成果保証=提供者は顧客と結果の提供について合意します。アクティビティマネジメント/アウトソーシングとは対照的に、特定の製品や技術とは直接関係のない、かなり抽象的な意味での結果を指します。結果をどのように提供するかは原則、提供者の自由です。典型例としては、ガスや冷房設備ではなく、オフィス内の指定された“快適な気候”を提供することや、農薬の販売ではなく、農家に対し最小限の収穫ロスを保証するなどが挙げられます
こうして見ると、特にカテゴリB:利用志向が顕著ですが、ソフトウェアを含む耐久消費財をイメージしたものが多いことが分かります。これはXaaS(X as a Service:種々のビジネスをサービスとして提供するモデル)がクラウドコンピューティングや自動車などを中心に議論されていることからもイメージしやすいでしょう。
ただ全体でみると、非耐久消費財に応用できるPSSも含まれており、広くさまざまな産業でヒントになるでしょう。
