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- 課題解決のためのデータ活用の始め方
データ活用のための“技術”と“ビジネス”を学ぶための5冊【第9回】

本連載ではこれまで、データ活用に向けて、データを収集・蓄積・可視化し、組織に定着させていくまでの一連の流れを解説してきました。今回は、その締めくくりとして、データ活用を学ぶうえで筆者がお薦めしたい書籍を5冊紹介します。技術書ではなく「データを使って、今の業務やビジネスを良くする」ための“考え方”を養える5冊だと考えます。
データ活用に取り組もうとすると、つい「まずは技術を勉強しよう」と専門書に手が伸びがちです。しかし、いきなり高度な技術書から入ると、難しさが先に立って前に進めなくなってしまうことがあります。
筆者が大切にしているのは「データ活用には2種類の知識が必要だ」という考え方です。1つはIT(情報技術)やデータ分析といった“技術的な知識”。もう1つは事業戦略や顧客理解、現場理解といった“ビジネスの知識”です。この2つは、レベルの差こそあれ、データ活用に関わる全てのメンバーが併せ持っているべきものだと考えています。エンジニアにもビジネスの視点が必要だし、企画担当者にも最低限の技術の土地勘は必要なのです。
今回の5冊は、この“技術”と“ビジネス”の両輪を意識して選んでいます。最初の3冊が技術側の土地勘を養う本、残り2冊はデータをビジネスにどう活かすか、どこに限界があるかを考えるための本です。
まずは「自分で一度やってみる」ことが理解への近道
技術的な内容を学ぶうえで強くお薦めしたいのが「まずは自分で一度やってみる」ことです。簡単な分析でも、小さな仕組みでも構いません。実際に手を動かしてみれば、本を100ページ読むよりも基本が腹落ちします。基本さえ押さえられれば、より高度な技術が出てきても「あれの応用だな」と推測しながら理解できるようになります。この「自分でやってみる」を後押ししてくれるのが次の3冊です。
■データ分析の入り口に:『統計学が最強の学問である』(西内 啓、ダイヤモンド社、https://www.diamond.co.jp/book/9784478022214.html)
統計学の世界をビジネスや社会の具体例を交えながら俯瞰できる一冊です。数式を1つひとつ追うというよりも「なぜ統計が役に立つのか」「どのような問いにどのような分析が向いているのか」という考え方をつかむのに適しています。社会調査法や疫学、心理統計、データマイニングなど統計学の主要な分野を横断的に扱っています。後半には読み応えのある内容も含まれますが、まずは「分析とは何をすることなのか」という全体像をつかみ、データに向き合うための最初の一歩としてお薦めします。
■システムの全体像をつかむ:『絵で見てわかるITインフラの仕組み 新装版』(山崎 泰史・三縄 慶子・畔勝 洋平・佐藤 貴彦、翔泳社、https://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798158464)
データは、サーバーやネットワークといったITインフラの上にあります。タイトルの通り図解や写真が豊富で、目に見えづらいITインフラの仕組みが直感的につかめます。中盤以降には、やや専門的な内容も出てきますが、全てを一読で理解しようとする必要はありません。データがどこに置かれ、どう運ばれ、どう処理されるのかという“地図”を手にしておくことで、技術者との会話のしやすさが大きく変わります。
■企業システムの設計思想を知る:『デジタルアーキテクチャー設計・構築ガイド DX推進から基幹系システム再生まで』(野村総合研究所、日経BP、https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/20/281610/)
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進から基幹系システムの再生まで、企業全体のシステムをどう設計していくかという視点を与えてくれる一冊です。個々の技術ではなく「全体をどう組み立てるか」という上流の考え方に触れられるため、データ基盤を企画・推進する立場の方に役立ちます。
これら3冊を挙げた背景には筆者の実感の1つがあります。「現在のIT環境は、過去からの積み上げでできている」ということです。筆者は、リレーショナルデータベース(RDB)が一般的になり始めた頃からIT業界にいますが「情報をデータの形に整理する」「データを加工して使う」という基本は、当時から本質的に変わっていません。ネットワークも、社内のイーサネットからインターネットへと広がりましたが、その骨格は地続きです。
新しい技術が次々と登場しているように見えても、その多くは過去の技術の延長線上にあります。だからこそ、流行を追いかける前に「変わらない基本」を押さえておくことが、結果的に一番の近道になるのです。