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  • 仏シュナイダーの実践例に見る脱炭素社会の作り方

旗艦ビル「IntenCity」における再生可能エネルギー利用の実際【第2回】

青柳 亮子(シュナイダーエレクトリック ジャパン カントリープレジデント)
2025年10月27日

前回、仏シュナイダーの旗艦ビル「IntenCity」が電力使用量の「ネットゼロ」を実現するための取り組みとして、電力消費量を一般的なビルに比べ10分の1に抑えるための省エネ技術について説明した。今回は、IntenCityにおける発電、すなわち再生可能エネルギーの活用策について説明する。

 仏シュナイダーエレクトリックは、旗艦ビルとなる「IntenCity(インテンシティー)」を仏グルノーブルに2020年に完成させた。IntenCityでは電力使用量の「ネットゼロ」実現に向けて、前回説明したように、省エネ技術によって電力消費量を一般的なビルの10分の1に抑えている。

図1:仏グルノーブルにある仏シュナイダーエレクトリックの旗艦ビル「IntenCity(インテンシティー)」の屋上には太陽光発電パネルが敷き詰められている

2500枚弱の太陽光パネルと2基の風力タービンで発電

 そのうえで、その電力使用量を補うために、太陽光発電と風力発電の2つの再生可能エネルギーによる発電設備を備えている。太陽光発電では、345ワットを発電する太陽光パネルを2485枚(4000平方メートル)使って年間900メガワット時を発電。風力発電では、300キロワット時の風力タービン2基を設置する。太陽光と合わせ年間97万キロワットを発電し、容量300キロワットの蓄電池に蓄えている。

図2:IntenCityの屋根の取り付けられた太陽光パネルと風力タービン

 これら設備で発電した電力は、冬期は施設内のみで利用している。それ以外のシーズンは、余剰電力を地元の電力会社であるGEG(Gaz Electricite de Grenoble)に売却している。契約内容は市場価格に基づいて毎年更新され、電力購入と売電は同じ価格で受け渡しされている。

 再生可能エネルギーの利用は、当社製アプリケーション「EcoStruxure Microgrid Advisor」(以下、Microgrid Advisor)によって最適化を図っている。エネルギーの資源と負荷を動的に制御し、IntenCityのパフォーマンスを最大化する。エネルギーを、いつ、どのように生産・消費・貯蔵するかを予測してもいる。これらの情報は、Webベースのユーザーインタフェースを介して、節約状況などをリアルタイムに捉えられる。

 Microgrid Advisorは、設定したKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)に沿って、その目標に向けて最適化するように動作する。IntenCityでは、KPIに「CO2をどう削減していくか」を設定し制御している。一般には、電力料金が高い時は電力使用を抑えて電力を売却し、安い時に電力会社から購入するなど、市場取引によって利益を得られるように制御するパターンが多い。

 Microgrid AdvisorはGEGのシステムとも接続されており、GEGに電力需要を要求したり余剰エネルギーを提供したりする。地域コミュニティと密接につながっていることもIntenCityの特徴の1つである。地域コミュニティにグリーンな電力を提供するという観点では、地域のCO2排出削減にも貢献している。

 欧州は、地域との関わりによって成功しているマイクログリッドの案件が多い。
電力が、そこに暮らす人々にとって欠かせないインフラである以上、当然のことでもある。