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  • 転換期を迎えた医療DX、現場実装への突破口

マイナンバーカードと医療DXで高齢化が進む日本の課題を解消する

「第4回 メディカルDX・ヘルステックフォーラム2025」より、デジタル庁 国民向けサービスグループ 統括官 三浦 明 氏

江嶋 徹
2025年11月17日

マイナポータルと同APIが医療関連情報の活用基盤に

 市民の利用促進に向けデジタル庁は「マイナポータル」を提供している。マイナンバーカードを使った行政手続きのオンライン申請や、行政機関からのお知らせ確認、自身の行政情報の確認などができる。「国税庁は税金情報を、年金機構は年金記録を、医療保険者は特定健診の結果やレセプト情報を、それぞれ持っている。こうした自分自身に関する情報を本人が閲覧できるサービス」(三浦氏)だ。

 これらの情報はマイナポータル1カ所に集約されているわけではない。「マイナンバーカードを“鍵”にして、自身の情報を持つ自治体や国税庁、厚労省の関係機関などのシステムにアクセスし、必要な情報を取りに行く仕組みになっている。現在、健康保険証情報、所得情報、各種手続きなど25種類以上の情報確認と申請ができる」(三浦氏)という(図2)。

図2:マイナポータルでは各行政期間が持つ個人情報を取得し提供する

 デジタル庁では「利用者の満足度を測りながらマイナポータルの改善を続け、常にサービスの向上に努めている」と三浦氏は話す。その中で特に注目すべきは「『マイナポータルAPI(Application Programming Interface)』を通じた民間アプリへの情報提供だ」と三浦氏は話す。

 例えば、日本調剤が提供する電子お薬手帳「お薬手帳プラス」は、マイナポータルAPIが提供するレセプト情報を使用しており「調剤場所にとらわれずに調剤履歴を確認できる」(三浦氏)。国税の電子申告・納税システムの「e-Tax」でも「マイナポータルAPIを使ってデータをやり取りしている」(同)という。

電子カルテ情報の共有に向けた実証実験も開始

 一方、医療現場のデジタル変革を進める医療DXにおいては「電子処方箋の推進も重要な取り組みになる」と三浦氏は話す。電子処方箋は当初、2025年3月までに“ほぼ全国に”普及させるのが目標だった。だが、医療機関の電子システムのライフサイクルや導入時期の集中による弊害を避けることを念頭に軌道修正された。

 それについて三浦氏は「自治体システムの標準化プロジェクトでも同様の課題に直面していたことから学んだ。医療分野でも電子カルテの導入に課題があるが、行政の側でも先行する取り組みから学んでいく必要がある」と語る。

 電子カルテの情報を医療機関などが共有できるようにする「電子カルテ情報共有サービス」は2025年から実証実験が始まっている。個人の診療情報などは、医療上有益ではあるもののセンシティブな情報であり、その扱いには注意が求められる(図3)。「そうした情報の特性を踏まえたうえで、医療機関には診療に当たっていただく必要がある。電子処方箋や電子カルテの情報共有サービスを広く普及させていくことが日本の医療DXでは重要になる」と三浦氏は説明する。

図3:「電子カルテ情報共有サービス」が扱う個人情報の例

 医療費のうち患者の自己負担分の全額あるいは一部を国や地方自治体が負担する公費負担医療制度の受給者証を電子化するシステムの開発もデジタル庁主導で進む。国による公費負担医療や、子ども医療費助成などの自治体制度への拡大を目指す。マイナンバーカードと診察券の一体化に向けたシステム改修への補助金もデジタル庁が提供している。

団塊の世代が後期高齢者になる中で医療DXは不可避な取り組み

 種々の取り組みに加えて三浦氏は、厚労省が先の通常国会に提出した医療法改正案について次のように説明する。

 「これからの15年、2040年見据えたときに必要な施策を取りまとめたものだ。地域医療構想、医師偏在対策、そして医療DXの推進の3つの柱がある。中でも特に医療DXの推進が重要になる」

 なぜなら、2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、急速に超高齢化社会が進行し、社会保障費の急増や、医療・介護人材の不足、労働力不足といった課題が日本社会全体に大きな影響を及ぼし始めているからだ。

 三浦氏は「2040年に向けては、団塊の世代が75歳から90歳になっていく。団塊の世代は1年に200万人以上いるのに対し、現在の新生児は年間70万人程度にとどまっており、若い世代の3倍の人々が大きな人口の塊として老いていく」と指摘する。2040年にかけては「医療・介護を必要とする高齢者はピークまで増加する見込みだ」(同)という。

 高齢者の増加に伴い、救急搬送の件数は確実に増加し、在宅医療の需要も高まっていく。しかも、それが各都道府県でバラバラに起きるため、それぞれにデジタル技術を活用した業務の効率化や自動化が必要になる。三浦氏は「医療DXは避けて通れない施策だ。デジタル庁としては“デジタルを駆使した医療”という世界観を実現するために、さまざまな取り組みを進めていく」と力を込める。