• Column
  • 転換期を迎えた医療DX、現場実装への突破口

アストラゼネカ、産官学連携で医療関連データを活用し持続可能な健康社会に

「第4回 メディカルDX・ヘルステックフォーラム2025」より、メディカル本部 オンコロジー領域統括部長 北川 洋 氏

トップスタジオ
2026年1月13日

アストラゼネカでは保険医療システム全体の変革を目指す取り組み「トランスフォームケア」を進めている。同社メディカル本部 オンコロジー領域統括部長の北川 洋 氏が「第4回 メディカルDX・ヘルステックフォーラム2025(主催:同実行委員会、2025年8月30日)」に登壇し、トランスフォームケアの鍵を握る「リアルワールドデータ」の活用について説明した。

 「当社は、薬を開発し提供するだけではなく、保健医療システム全体を対象に多様なステークホルダーと協業し、病気の進行や入院、早期死亡を減らすことを目指している」--。アストラゼネカ メディカル本部 オンコロジー領域統括部長の北川 洋 氏は、同社が進める「トランスフォームケア(保健医療の変革)」について、こう説明する(写真1)。トランスフォームケアは、診断から治療、その後のケアまで、保険医療全体の変革を目指す取り組みである。

写真1:アストラゼネカ メディカル本部 オンコロジー領域統括部長の北川 洋 氏

製薬会社が関わりにくかった領域での産官学連携を促す

 トランスフォームケアの推進における課題として同社は(1)早期診断の促進、(2)ガイドラインに基づく最適治療、(3)医療連携と個別化医療の促進、(4)医療政策による環境整備などを挙げている(図1)。

図1:「トランスフォームケア」における課題解決に向け多様なステークホルダーと協働する

 中でも医療政策による環境整備は「これまで製薬会社が関わりにくかった領域だ。多様なステークホルダーと協働し産官学の連携を促すことで保険医療システム全体に貢献していきたい」と北川氏は強調する。2025年には例えば、複数の自治体との協働に取り組んだ。

 3月には福島県と「健康づくりの推進に関する連携協定」を、5月には奈良市と「非感染性疾患の予防及び管理の普及・推進に関する連携協定」を、それぞれ締結した。いずれにおいてもアストラゼネカは、NCDs(Non-Communicable Diseases:非感染性疾患)の早期発見や早期治療による発症や重症化の予防に向けて、検査データやカルテデータ、レセプト情報などの医療データ解析を担当することも視野に入れている。

 こうした産官学連携による医療実態の解明も見据えてアストラゼネカでは、実社会における医療関連データである「リアルワールドデータ(RWD:Real World Data」の解析基盤「JDH(Japan Data Hub)」を構築した。「延べ9000万人以上のヘルスケアデータを自社で保有し、タイムリーな解析を可能にしている」(北川氏)

 データ解析に向けてアストラゼネカは、2025年2月に改正次世代医療基盤法に基づく仮名加工医療情報の利用事業者の第1号認定を取得した。「(本フォーラム開催時点において)営利企業ではアストラゼネカが唯一」(同)である。

 JDHにおけるRWD活用の方向性として北川氏は(1)希少疾患における対照群の設定、(2)医薬品の安全性調査、(3)医療実態を明らかにする疫学的エビデンスの創出の3つを示す。これらにより「日本独自のエビデンスを創出し、医薬品開発に役立てたい」(北川氏)考えだ。

 データの解析結果の質を保つために「解析が属人的にならないよう、解析データセットや解析スペックの作成に関するナレッジを組織として蓄積している」(北川氏)という。