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  • 転換期を迎えた医療DX、現場実装への突破口

医療データ活用では人材不足・標準化の遅れ・国際競争力の低下の3大課題の解消が不可欠

「第4回 メディカルDX・ヘルステックフォーラム2025」より、IDIAL代表理事 岡田 美保子 氏

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2026年3月10日

医療データ活用基盤整備機構(IDIAL:Institute of Health Data Infrastructure for All)は、医療データによる倫理的かつ安全で実践的な価値創出を目指し、その標準化などに取り組んでいる。IDIAL代表理事の岡田 美保子 氏が「第4回 メディカルDX・ヘルステックフォーラム2025(主催:同実行委員会、2025年8月30日)」に登壇し、医療DXを進めるための医療情報人材やデータ標準の必要性などについて説明した。

 「医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が叫ばれる中、電子カルテをはじめとする医療データの活用が、医療の質の向上や患者還元の鍵として期待されている。しかし、データが生成される医療現場では、25年前から変わらない根本的な課題が残されたままだ。すなわち人材不足、標準化の遅れ、そして国際競争力の低下である」--。医療データ活用基盤整備機構(IDIAL:Institute of Health Data Infrastructure for All)代表理事の岡田 美保子 氏は、こう問題を提起する(写真1)。

写真1:医療データ活用基盤整備機構(IDIAL:Institute of Health Data Infrastructure for All) 代表理事の岡田 美保子 氏

医療DXの推進にはデータを扱う医療情報技師の配置が重要に

 日本における病院への情報システムの導入は1970年代に始まり、医療会計システムの普及も諸外国に比べて早かった。それが「電子カルテの時代になりデータ活用ニーズが高まる一方で、根本的な問題が浮き彫りになってきた」と岡田氏は指摘し、こう続ける。

 「25年前から言われ続けているが、院内にデータがあることが分かっていても
簡単には使えない。各種の医療指標(インジケーター)すら出せない。出そうとすれば、その都度コストが発生してしまう。こんなことでは、とてもじゃないが電子カルテ情報の活用は難しい。そもそも院内にエンジニアが存在せず、現場にシステムやデータ処理への知識を持つ人材がおらずシステムベンダーに頼るしかない状況が続いている。こうした構造的な問題は、医療DXが叫ばれる今も根本的には変わっていない」

 この問題に対応するために2003年に誕生したのが「医療情報技師」の資格認定制度である。医学と情報技術、医療情報システムの3分野から出題され「合格率は2024年度で37%と決して容易ではない試験」(岡田氏)である。これまでに約2万7000人が認定されている。「医療機関以外からの受験者が多いのが特徴だ」(同)という。

 ただ「資格保有者は着実に増えているものの、現場を仕切れるリーダークラスの人材は、まだまだ不足している」と岡田氏は話す。例えば、医療情報技師の上位資格である上級医療情報技師は、なかなか人数が増えていない。「上級医療情報技師が日本の医療施設にもっと配置されるようになれば、医療DXの推進に非常に効果があるのではないか」(同)と期待する。

 さらに岡田氏は、院内の体制上の課題も指摘する。「医療DXの推進には、院内の全体データを把握している人材が不可欠だ。だが多くの病院では「全部を分かっている人材が、ほぼいない状況が続いている。データ活用の観点から部門間で担当者が情報共有を図る体制と、システムベンダーが参加して協議できる体制が必要」(同)という。

 人材や体制の課題に加えて「医療データ活用そのものの考え方が大きく変わってきている」と岡田氏は話す。

 従来の医療情報は、患者本人の診療・治療のための一次利用と、経営や調査、研究などのための二次利用とに分けて考えられてきた。しかし「診療へのフィードバックが比較的瞬時に可能な時代になり、分析結果が患者の診療に還元されるため、一次利用と二次利用の境界があいまいになってきている。これからの二次利用は完全に還元されるのが基本だ」と岡田氏は指摘する(図1)。

図1:二次利用による研究成果の患者への還元