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AIはデータマネジメントを求め、データマネジメントはAIを求める
Informatica World 2019
海外では全社共有のデータ分析基盤構築が進んでいる
ところでクラウドベンダーやインフォマティカが強調するAIを使ったデータ活用は実際に進展しているのだろうか。そんな疑問を打ち消すのが、基調講演に登壇・紹介されたユーザー企業の事例だ。
英エネルギー大手のBPがその1社。同社は、全社員がデータをセルフサービス型で利用可能にするための全社データ基盤を構築。複数のデータレイクとクラウドをまたがって、どこに有効なデータがあるかを表示するポータル機能を用意したという。この取り組みでBPは、インフォマティカの顧客表彰制度で「インテリジェントディスラプターオブザイヤー」を受賞した。
またスイスのクレディ・スイスは、データを経営資源に変えるために、クラウド上でのAIによるデータ分析基盤を構築している。同プロジェクトをCIO(最高情報責任者)として牽引したサイモン・アプトン氏は現在、投資銀行および資本市場担当のCOO(最高執行責任者)に登用されている(写真8)。
これらの例が特別ではないと思えるのは、Informatica World 2019では昨年まで多用されていた「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という用語が、ほとんど聞かれなかったこともある。つまり、DXへ取り組むことは当然であり、それを実行するためにデータの利用環境を整備し、最新のAI/MLによる分析に実際に取り組んでいるということを強く印象づけた。
人材だけでなくデータ基盤の整備にも注目を
データ活用へのAIの適用に関しては日本でも、日本経済団体連合会(経団連)が2019年2月19日に『AI活用戦略〜AI−Readyな社会の実現に向けて』を提言するなど、もはや避けては通れないテーマになっている。同提言では、経営層から、専門家、従業員までがAIによるデータ分析・活用ができる環境を目指す。
こうした動きを受けてデータサイエンティストやAIエンジニアなど人材獲得競争も激しさを増している。IT業界やゲーム業界などにとどまらず、製造業や流通業においても、そうした人材獲得のために給与体系までを見直す動きも珍しくなくなってきた。
そうした“人材不足”には目が行く一方で、データ環境の整備については、なかなか関心が高まっていないのが実状ではないだろか。データの品質の不備やデータのサイロ化などを原因とするAI関連プロジェクトの遅れや頓挫といったケースが漏れ聞こえてくる。分析結果やビジネス上の成果、あるいは分析のためのアプリケーションに意識が集中しているからだろう。
インフォマティカが手がけるマスターデータ管理やデータ品質管理などは、その実現手法は今回紹介したようにAIなどによって大きく進化しているものの、その考え方の基本自体は決して新しくはない。ただこれまでの取り組みは決して十分と言えるものではない。
各種ツールを提供するシステムインテグレーターにしても、単発のソリューションとして提案・利用するに留まり、投資対効果を示しづらいデータ基盤としての提案ができていないのが、これまでだ。結果、たとえばインフォマティカ製品を担当する技術者を常時抱え教育することが難しくなり、なおさら本格的なデータ基盤提案ができないという悪循環すら生まれている。
少子高齢化を背景にした労働者不足や、働き方改革に伴う就業時間の短縮など、データを軸とした事業の自動化や新規ビジネス創出を求める課題は増える一方だ。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)なりAIなりをテコにビジネス改革を進めるのであれば、今一度、そのために必要なデータ環境とは何かを考えなければならない。
同分野に25年前から取り組むインフォマティカが掲げるIDPは、クラウド時代のデータ環境を体系づけたものだと言えるだけに、データ基盤を考えるためのリファレンスとしても有効だろう。