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部下をやる気にさせる3Mの「マネジメント2.0」とは
脳科学から導かれた“ニューロマネジメント”の極意
やる気を引き出すためのSSRマネジメント
上記の8つ感情を理解した上で“やる気”を引き出すためのマネジメントの手法として大久保が考案したのが次の「SSR」だ(図2)。
S=Stretch :背伸びした目標の設定
S=Support :精神面の支援
R=Reward :正当な評価と報酬
SSRのそれぞれは、以下の感情に作用する。()内は、それら感情を左右する脳内物質である
S ⇒ 不安・ストレス(ノルアドレナリン)
S ⇒ 安心・安定(セロトニン)
R ⇒ 快楽(ドーパミン)
つまりSSRは、最初に不安定な状況に置いて新しいことにチャレンジさせ、次にそのチャレンジをサポートすることで安心させる。最後に、その活動を正当に評価し、報酬を与えることで快楽を与えるというサイクルだ。
このうち特に注意したいのが、「Supportに関連するセロトニン。日本人はセロトニンが出にくい人種だとする調査結果があり、不安な状況で気分が落ち込んだり安定しなくなったりする」(大久保氏)からだ。
これについて大久保氏は「米作文化と共通点がある」とする。すなわち「米作りなどの農業では、周りを気にしながら群れることを重視し、大胆な変化よりもコツコツと小さな改善を続けるほうが都合がよかったから」(同)とする。
“忖度”はマネジメントで防げる
セロトニンが分泌されにくいと、「不安定な状況における意思決定の段階で、論理よりも感情が優先される傾向がある」(大久保氏)とする。それがマイナスに作用した例が「見えない存在に怯え“忖度”によって法を犯すような行為」(同)だ。だが大久保氏は「忖度は、正しいマネジメントによって回避できる」と強調する(図3)。
そこでは、「セロトニンを増やすことを意識した自己マネジメントも重要になる」(大久保氏)。具体的には次の6つのサイクルを生活習慣にすれば「ストレスに負けず、脳の生産性を高められる」(同)とする。
1:豆類など、セロトニンのもとになるトリプトファンを多く含む食事を心がける
2:適度な運動で汗をかく
3:睡眠を十分にとる
4:ゆったり深呼吸する
5:ときにはぼんやりする
6:気持ちを穏やかにする
一方で大久保氏は、セロトニンが出にくいという日本人の性質は「プラスに働くこともある」ともいう。「組織の影響が小さく、単独で仕事をするような職人などの仕事には向いている。丁寧な仕事をするし、ほかの人が見落とすことを見つけられる能力がある。こうした特性を生かし“チーム”の中で補完し合えばいい」(同)。
イノベーションを創出するのが人間であることは間違いがないだろう。イノベーションが求められる時代にあって 脳の構造から人間の本質に迫る「マネジメント2.0」が注目されるのは当然なのかもしれない。