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COVID-19対策でフィリップスが考える支援策、「SOS」発するデバイスや医療用MaaSなど

野々下 裕子(ITジャーナリスト)
2020年5月1日

医療用MaaSの提供も検討

 また、もし感染しているかどうかが不明あるいは感染していても軽症・無症状の場合に備え、医療従事者への感染をできるだけ防ぎながら受け入れ施設や医療機関への移動を可能にするMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の提供も検討している(写真4)。2019年末に長野県伊那市で進めているヘルスケアモビリティ事業をベースにする。

写真4:医療用のMaaS提供に向けた開発も進められている。

 医療用MaaSは、感染防止のために来院が難しくなっている一般の外来患者向けも検討する。

軽症、中等症に対応する医療機関向け支援策

 新型の超音波診断装置「Lumify」を中心に、専用の生体モニター装置や汎用型人工呼吸器といった必要な機器を一元的に提供する。

重症者に対応する医療機関向け支援

 専門スタッフが少ないICUを効率化し現場の負担を軽減するために、遠隔ICUソリューションを提供する(写真5)。患者のベッドサイドにいるスタッフを支援センターに詰める専門スタッフが遠隔地から支援できるようになる。

写真5:遠隔ICUソリューションにより少数の専門スタッフとの連携を図る

 ただ遠隔ICUは、薬事法上では未承認のソリューションだ。国内では昭和大学が2018年からトライアルを初めている段階だ。最終的な成果は未発表だが「全体のオペレーションに対し大きなメリットが得られることが見えてきた」と堤社長は話す。

データに基づく医療のためのプラットフォームを強調

 これらのソリューションは、医療現場において「症状を悪化させないよう、いかに軽症で抑えられる」に重点を置いているとする。また、すでに保有されている設備などとの連携を前提に提案していることから「多くの自治体や医療機関がから興味を持たれている」(堤社長)という。

 新型コロナウィルス対策について堤社長は、「医療崩壊への危機が叫ばれる中、医療機関や医療従事者を支えるには、医療の土台をつなぐ共通プラットホームが大事になってくる。生命や健康といった観点から医療を支える情報科学としてのヘルスインフォマティクスを強化する必要がある」と強調した(写真6)。

写真6:フィリップスが描く「ヘルスインフォマティクス」の全体像と具体策

 フィリップスとしては「患者一人ひとりに最適な医療の提供に向けて、データを重視しタイムリーな対応ができる新しいヘルスケアのあり方を提案することが使命だ」と堤社長は語る。

 加えて、感染防止のためにソーシャルディスタンスは必要だが、「人と人との精神的なディスタンスは離れてはいけない。人が人を助けるために一緒になって行動を起こし問題を一つずつ解決することでヘルスケアのバリューを構築していきたい」(同)ともいう。

 今後は、新型コロナウィルスの状況に合わせ、「サスティナブルかつフレキシブルに考えながら適切なソリューションを具体的な形で早く提供していく」(堤社長)考えだ。