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【CES2025:スタートアップ編】資金とパートナーシップを求め世界のスタートアップが集合
展示ブースはパビリオン化で“玉石混交”になり過渡期の様相も
大手企業による分野や地域を超えたスタートアップ支援も広がる
2025年のEureka Parkでは企業が支援するスタートアップも目に付いた。ここでも韓国勢は積極的で、韓国SAMSUNGは2012年から続ける社内ベンチャープログラム「Samsung C-Lab」のブースを毎年出展している(写真4)。これまでに900以上のプロジェクトとスタートアップを育成しており評価も高い。2025年は、AI、IoT、デジタルヘルスを扱う12社が出展し、全社がイノベーションアワードを受賞した。
韓国LGは、米シリコンバレーを拠点にする「LG NOVA」を通じて、社会貢献に取り組む企業を支援している。2025年のブースでは、ヘルステック、クリーンテック、AIを活用するスタートアップの紹介に加え、ファウンダー(創業者)と話せるプログラムも用意した。
また独Siemensは、スタートアップ支援の新規プログラム「Siemens for Startups」を立ち上げ、初期段階のエンジニアリングおよび製造分野で同社と連携するスタートアップを紹介した(写真5)。支援対象の地域や分野にはこだわっておらず幅広い。
米Arkisysが、その1社。衛星の組み立てから補給までを対象にした宇宙初のビジネスプラットフォーム「Arkisys Port」の構築を目指す。英Tendedは、地理空間データとウェアラブル技術を使って作業環境の安全性を守るソリューションを開発している。
日本のキヤノンは、プロトタイプを市場に売り込む「CANON AMERICAS LAB」を出展した。主力のカメラ事業などとは直接関係がないような分野も対象にしている。ゴルフスイング分析カメラや、バイオマス由来のプラスチック、石油化学品を代替する天然シルク素材などを展示した。
資金とパートナーを求めるピッチコンテストも数多く開催
ブースと並んで、スタートアップとの出会いの場になっているのがピッチコンテストである。メディアや著名人を集めて開催されるコンテスト以外にも、Eureka Parkでは各国のブースで毎日、ピッチコンテストが開かれている。
CESの主催者であるCTAが開催する年次コンペティション「CTA Foundation Pitch Contest」は優勝賞金が1万ドルで、CTAからの支援も受けられる。2025年は、高齢者や障害者に利益をもたらすAI技術を目的にする最先端テクノロジーをテーマに9人が決勝ピッチの壇上に立った。
優勝したのは、英MakeSense Technologyで、視覚障害者をナビゲートするスマート白杖「MakeSense」を開発する。準優勝の米SIGN-SPEAKは、手話を音声に、音声をアバターによる手話にそれぞれ変換する技術を開発する。
米国陸軍は国防総省に直接ピッチができる「Xtech Live Pitch Competition」を2018年から開催している(写真6)。障壁が高い軍用マーケットに自社の技術を売り込め、政府のエコシステムを利用したアクセラレータープログラムを受けられる。2025年は中小企業も参加し、10名が受賞した。賞金は1人1万ドルである。
他にも、世界100カ国5000社以上が参加する世界最大のピッチコンテストExtreme Tech Challengeは、半導体とAIをテーマにした「Extreme Tech Challenge Semiconductors & AI Startup Innovation Cup」を英Armと台湾Foxconnのスポンサーを受けて開催。患者の安全技術をテーマにした「Patient Safety Technology Challenge Grand Awards」が初めて開催された。
スタートアップの数は増えてもインパクトに欠けてきた
出展するスタートアップの数は増えている一方で、これまでに見たことがないようなインパクトのある出展は減っているように感じる。前年と同じか、少しアップデートした内容を出展しているところが目に付くためだ。ブースだけがあり説明者が誰もいないブースもけっこうあった(写真7)。“玉石混交”のスタートアップのブース群の中で“これだ”という技術や製品/サービスと出会うのは、ますます難しくなっている。
スタートアップ関連イベントは、まだまだが盛りだくさんのCESではあるが、過渡期を迎えているようにも見える。Eureka Parkは広大な会場を持ち、これまでは「CESで真っ先に見るべきところだ」と言われてきた。だが、今回のような展示内容が続けば、来場者の足が遠のき、結果、出展を控えるスタートアップも出てくるだろう。
数を集めながら質を担保することがCESでも難しくなっている。この課題をどうクリアするのか、新しいアイデアが求められている。