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【CES2025:スタートアップ編】資金とパートナーシップを求め世界のスタートアップが集合
展示ブースはパビリオン化で“玉石混交”になり過渡期の様相も
世界最大規模の国際テックイベント「CES2025」で大盛況だったのはスタートアップが集まる「Eureka Park」である。39カ国から1400のスタートアップ企業が参加し、その数は全体の4分の1以上を占める。出展ブースは、カテゴリー別からパビリオン形式にシフトし、会場の外へも広がった。社内ベンチャーや企業アクセラレーションも増え、ピッチコンテストも多数開催された。一方で無人ブースもあり過渡期を迎えている様相も見えた。
「Eureka Park」は、スタートアップや企業内組織が開発する最新技術や研究アイデアが集まるテーマエリアである。2012年に、現在の10分の1以下の規模で始まったが、出展規模は年々拡大し、今や看板エリアになっている。数年前から「ベネチアンエキスポ・コンベンションセンター」の1階が定位置になり、毎年フロアを埋め尽くすほどの出展者と参加者が訪れる(写真1)。
出展するには、市場に1年以上出回っていない、連続出展は2回までといった審査基準をクリアする必要があるが、他エリアでは高額な出展料がEureka Parkでは抑えられており、大手メーカーの新製品発表とは一味ちがう、見たことがない技術や製品に直接出会える場になっている。取材者からみても“宝の山”だと言える。
2025年は39カ国から1400のスタートアップ企業が参加した。CES2025全体の展示数が4500以上なので、4分の1以上がEureka Parkに集まっていることになる。しかも今回は、1階フロアに収まりきらなかったのか、2階フロアにもパビリオン形式のブースが驚くほど多数、出展していた。
スタートアップが世界にアピールする機会は、いくつもある。それでもCESに多くのスタートアップが集まる理由の1つは、参加者数が多く、資金調達や支援者と直接エンゲージメントできる機会が多いことだ。新しいカテゴリーが次々と作られ、あらゆるジャンルから出展できることも大きなメリットだ。
フランスと韓国は3ケタのスタートアップを送り込む
Eureka Parkはこれまで、デジタルヘルスやビークルテック、スマートホーム、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)などカテゴリー別にブースが並んでいた。今は、ほとんどがパビリオン形式になり、各国のスタートアップ支援策で選ばれたスタートアップのブースが並ぶ。
この方式を数年前に確立し、Eureka Parkで存在感を高めたのがフランス政府が推すフレンチテックである。コロナ以前は最大で400社近くが出展していた。年々数は減っているものの、それでも国別の出展者数は4番目に多い。
2025年は企業スポンサーを付けた「Business France」と呼ぶパビリオンを出展し、16分野から135社のスタートアップが参加した(写真2)。他にもヘルステック&ウェルネス、グリーンテック、スマートビークルなどの分野で出展をサポート。2030年冬季オリンピック・パラリンピックの開催地に選ばれたオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域のパビリオンも設けるなど、国としてのブランド力をアピールする上手さが感じられた。
そのフランスに代わって圧倒的な数で注目を集めたのが韓国である。CES2025への国別の出展数は2024年から倍近い1000社以上に増え、その数は米国、中国に次ぐ3番手である。その多くがEureka Parkに出展しており、スタートアップの出展数だけを見ればトップに立つだろう。
ただ韓国としてではなく、さまざまな組織が、それぞれのパビリオンを設けているのが特徴だ。政府のスタートアップ支援機関「KISED」もいれば、韓国版JETRO(日本貿易振興機構)と言える貿易振興公社の「KOTRA」、韓国科学技術院の「KAIST」のような大学単位、ソウルや釜山など行政単位の出展もある(写真3)。
例えば広州市(Gwangju City)は、AI技術をテーマにブースを設けていた。同市担当者は、「韓国のテック産業は、地域や組織間の競争が激化している。AI産業はエレクトロニクス産業よりも応用範囲が広く、地域産業として力を入れている。そのことを世界にアピールする機会としてCESは最適だ」と話す。実際、多くの参加者が訪れ、ビジネスチャンスへの期待を高めていた。