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海外で活躍できるスタートアップを輩出するカナダや豪、スイスの支援策

神戸市が海外スタートアップのインバウンドサポートイベントを開催

かのう よしこ
2025年3月28日

スイス:14年間連続イノベーションランキング世界トップ

 スイスは、科学分野で日本との交流を促す科学領事館「スイスネックス・ジャパン」を神戸市においている。スイス領事館・スイスネックス・スタートアップ&イノベーション担当のラドビック・マルコ氏は「スイスはイノベーションランキングの『Global Innovation Index(GII)』において14年間連続で世界1位に選ばれている。イノベーション活用支援にも投資した結果、2024年の『Global Startup Ecosystem Index』でもトップ10入りを果たした」と強調する。

写真3:スイスはイノベーションランキングで14年間、世界1位を続けている

 スイスのイノベーションへの投資額はGDPの約3%。「競争力の高い人材の存在や多言語国家としての多様性が強み」(マルコ氏)という。さらにカントン州政府が、税制において一定の自由裁量権を持ち、法人税や各種の投資への優遇策を用意する。

 マルコ氏は「スイスのスタートアップの3割が起業から2年以内に日本に拠点を持つ」と話す。「製造業における品質へのこだわりの強さや、プロセス改善や付加価値を高めるアプローチが日本と共通」(同)なのが、その理由という。特に神戸は「水素エネルギーやバイオテクノロジーのクラスターがあり、スイスの得意分野であるバイオテクノロジーやメドテック(医療技術)、クライメートテック(気候変動関連技術)での連携に適している」(同)とした。

 マルコ氏はスイスで物流会社を家族で経営し、スイス国営郵便のラストマイル配送業務を担当。日本ではeスポーツのトーナメントシリーズを立ち上げた実績がある。

製造、XR、風力発電、事業効率化の海外スタートアップがピッチ

 イベント後半では、神戸に進出あるいは神戸にある企業との協業を始めた海外スタートアップ4社が登壇し、それぞれの技術を紹介した。

ベトナムのDOSOFTPRO:製造業向けERPサービスを提供

 DOSOFTPROはベトナム・ホーチミンを拠点とするスタートアップである。縫製工場を対象にしたERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)のクラウドサービスを展開する。アパレル業の多品種少量、短いライフサイクルといった条件での生産に対応する。自社開発にこだわらず各国パートナーと共同で開発しているという。2025年2月に神戸市内に日本拠点を設立した。

加Shocap Entertainment:XRによるエンターテインメントを展開

 Shocap Entertainmentは、カナダのCTAプログラムに採択されているスタートアップである。XR(クロスリアリティ)技術を使ったエンタテインメント事業を展開する。ライブイベントやショーを、会場客席のほか、ライブストリームやVR(Virtual Reality:仮想現実)による視聴者に向けて提供する。モントリオールを拠点にするパフォーマンス集団「シルク・ドゥ・ソレイユ」とのコラボレーションや、エミー賞を受賞した米ドラマ『SHOGUN 将軍』での馬や侍のモーションキャプチャーを担当している。日本では歌舞伎とのコラボレーションを検討しているようだ。

スイスflowgen:小型の風力発電機を開発

 flowgenは、小型の風力発電・蓄積技術を開発するスイス発のスタートアップである。小型の風力発電機と太陽光発電や蓄電装置を組み合わせエネルギーの交換効率を高めることで、装置自体の小型軽量化を可能にしている。重さは既存製品の3分の1程度になったとする。日本では、風速や風向きが安定せず、平地の確保の難しさからの風力発電が普及してこなかったが、小型化に期待する日本企業からのオファーも多いという。

韓国Tilda:業務効率を高めるAIシステムを開発

 韓国のTildaは業務効率を高めるためのAIシステムや機械学習システムを提供する。ビジネスデータから、リスクやコスト、環境フットプリントを最小にし、利益を最大にするためのビジネス戦略を提案する。抽象的な目標設定だけでなく、最適なアクションプランに落とし込む点を強調し、製造業や物流業などへの導入を目指す。既に神戸市西区に日本拠点を置いている。

 本イベントを主催した神戸市の経済観光局 新産業創造課イノベーション専門官の内藤 千愛 氏は「2025年は大阪・関西万博も控え、海外スタートアップによるピッチの機会が増えるだろう。スタートアップのトレンドを日本企業のビジネスにつなげる機会を今後も提供していきたい」とする。

 ちなみに内藤氏は、前職でカンボジアの起業家やスタートアップの育成、ビジネスマッチング支援に従事していたという。