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スパイダーシルクによる人工内蔵製造などラトビアの医療系スタートアップが大阪に集結

アラトビア投資開発庁主催「バルト・メドテック・ブリッジ」より

野々下 裕子(NOISIA:テックジャーナリスト)
2025年5月16日

ヨーロッパ北東のバルト三国の1国であるラトビアが、ディープテックを中心としたスタートアップ輩出国として注目を集めている。中でも再生医療などのメドテック分野における先進技術に取り組んでいる。同国のラトビア投資開発庁が2025年4月14日、大阪の未来医療国際拠点である「中之島クロス」でのピッチイベント「バルト・メドテック・ブリッジ」を開催し、有望視されるスタートアップなど6社が登壇した。

 ディープテックを中心としたスタートアップ輩出国として近年、注目されているのが、バルト三国の中央に位置するラトビアだ。スタートアップ支援法をはじめとしたエコシステム強化のための、さまざまなプログラムを用意し、2024年時点で500以上のスタートアップが設立されている。

 ラトビアの国土は日本の6分の1、人口は約190万人である。北側に位置し電子国家として知られるエストニアに比べると日本での知名度は低いものの、1991年に旧ソ連から再独立したのを機に日本との関係を強め、2021年に友好100周年を迎えている。

 そのラトビアの投資開発庁(LIAA)が2025年4月14日、大阪の未来医療国際拠点である「中之島クロス」において、ラトビアと日本の協業に向けたイベント「バルト・メドテック・ブリッジ」を開催した。大阪・関西万博などに合わせての来日したスタートアップや既に成功している企業など6社が登壇し、アイデアやビジネスを発表した。ちなみに万博会場では、リトアニアと共同で「バルトパビリオン」を出展している(写真1)。

写真1:大阪・関西万博にラトビアがリトアニアと共同で出展した「バルトパビリオン」

 ラトビア投資開発庁によれば、ラトビア政府は現在、(1)生物医学、医療技術、薬学、(2)フォトニクス(光工学)、(3)スマート材料、技術工学、スマートエネルギー、モビリティー、(4)ICT、スマートシティー、(5)知識集約型のバイオエコノミーの5ジャンルを重点領域に技術開発を後押ししている。

 中でもバイオメディカル分野においては、既存企業とスタートアップが連携して基礎から高度までの研究に取り組み、その成長により独自の地位を確立している。例えば、ラトビアで製造された化学製品・医薬品の76.7%は、日本やアメリカ、カナダなどへ輸出されている。医薬品の輸出額は2024年時点で6億4570万ユーロ(約1050億円)と、輸出総額の3.4%を占める。

 研究開発に対しては、医薬品、バイオテクノロジー、医療機器などを対象に官民連携による活発な投資がなされている。医療研究のための専門機器の製造や、人工内臓を3D(3次元)プリンティング技術で作成するための素材の開発など、新たなデジタルヘルスソリューションを提案する動きが進んでいる。以下では登壇したスタートアップを紹介する。

医療・食品用素材や同分野での研究開発機器などを開発

Biosan

 バイオテクノロジーやゲノミクス(ゲノム研究)などに使用する多機能な個人用実験装置を開発・製造している(写真2)。1992年の設立で30年以上の実績を持ち、世界でも知名度がある。実験装置には、細胞培養や、サンプルの混合、遠心分離などがあり、小型で効率の良い機器を需要に応じて開発することを得意としている。116カ国以上に輸出しており、売上高の98%は海外市場によるものだ。日本ともビジネスを展開している。

写真2:Biosanは個人用実験装置を開発・製造する

ELMI

 1989年創業の医療関連機器メーカー。小型のベンチトップ型遠心分離機や、研究用のミキサーやシェイカーなどを開発・製造している(写真3)。ラトビアの首都リガに本社を置き、7000平方メートルの工場を併設している。イノベーティブな技術を開発する企業として国から複数回、表彰されている。

写真3:ELMIは、遠心分離機や研究用ミキサーなどを製造する