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老朽化が進む日本の上下水道インフラ、解決策として米Autodesk日本法人が自社製品をアピール

齋藤 公二(インサイト)
2025年6月23日

稼働状況などをモニタリングしシミュレーションで検証

 これらソフトウェア群のユースケースとして河村氏は、上水(配水)と下排水とに分けて説明する。

 上水領域で良く利用されるソフトウェアとしてInfo360とIWLive Proを挙げる。Info360で、水道管路網に設置したセンサーで流量や水圧、水質などのデータを収集し、水道管のデジタルツインを作成。それをIWLive Proに取り込み、種々のシナリオをシミュレーションで検証したり、漏水や水質事故の原因究明や影響範囲を分析したりする。

 河村氏は「水道管の破損状況やポンプの流量を把握し、そこからバルブの閉止など、さまざまなシナリオをシミュレーションすれば、災害や非常時などの対応を迅速に実施できるようになる」とする。

 下排水領域では、Civil 3D、InfoDrainage、InfoWorks ICMを挙げる。Civil 3DとInfoDrainageを使って建設地・開発地における排水システム設計したり、InfoWorks ICMで下水道網や河川全体を含む集水域全体のモデリングと解析を実施する。

 InfoWorks ICMは近年、国内でも「街中での内水氾濫の解析に広く利用されている」(河村氏)という。ICM Liveでモニタリングする降雨量や河川の水位、排水ポンプやゲートの稼働状況などから氾濫の発生を予測する。ICM Liveは「発報システムや指令センターと連携し、水害発生時の避難指示や緊急対応につなげられる」(同)とする(図1)。

図1:InfoWorks ICM /ICM Liveは発報システムや指令センターと連携し、水害発生時の避難指示や緊急対応につなげる

ハザードマップ作成やリアルタイム監視などの国内導入も進む

 続けて国内での導入事例として次の4つを挙げる。

浸水想定区域図(ハザードマップ)の作成

 全国の自治体が作成を義務付けられている「浸水想定区域図(ハザードマップ)」の作成時に、InfoWorks ICMによるシミュレーションが使用されている。日本下水道 新技術機構の『流出解析モデル利活用マニュアル(2017年3月)』に掲載されるなど「技術的な信頼を得ている」(河村氏)という

ライブモデル

 観測データをリアルタイムに取り込む「ライブモデル」の利用が進む。工業用水道事業では水質解析ソフトウェア「InfoWorks WS Pro」が、下水道事業ではICM Liveが自治体に採用されている

水道管の維持管理

 福岡県久留米市が水道配水管の維持管理・更新計画にAI技術を用いる仕組みを実証した。それまで久留米市は、GISで配水管網を管理してきたものの「管路の位置の確認程度にしか利用しておらず老朽化や交換の優先度を評価する手段がなかった」(河村氏)

 実証では委託を受けた東亜グラウト工業がInfo360 Assetを使い「全ての配水管路の属性情報を基に、管路の劣化度や重要度を網羅した状態評価を効率的に実施できた」(河村氏)としている(図2)。

図2:Info360 Assetを使って水道のインフラ資産を視覚化した例

外構の計画・設計

 プラントや大規模施設の外構や敷地全体の計画・設計でのInfoDrainageの利用が増えているとする。同製品は「当社ソフトウェアの中でも特にAI技術の開発が積極的に進められている製品だ」(河村氏)という。基本条件を入力すれば初期設計を自動生成する。

 海外事例では、ドローンで地形の点群データを取得し洪水リスクをリアルタイムに解析したり、ポンプ場の運転をデジタルツインで最適化し、CO2排出量や運転コストを削減したりしているという。