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【大阪・関西万博】北欧5カ国のスタートアップがディープテックを紹介
「北欧スタートアップデー@大阪・関西万博 ピッチイベント」から

大阪・関西万博では、その開催に合わせて各国が日本進出を目指す自国のスタートアップを紹介するイベントやセミナーが開かれている。今回は2025年5月6日に北欧パビリオン「ノルディック・サークル」で開催された「北欧スタートアップデー@大阪・関西万博」のピッチイベントから、北欧のスタートアップ動向と注目を集めていたスタートアップを紹介する。
北欧はスタートアップマインドが高いとされ、フィンランドの「Slush」やデンマークの「TechBBQ」といった世界的に知られるスタートアップイベントを開催している。人口1人当たりのベンチャーキャピタル投資額ではスウェーデンがヨーロッパトップになるなど、北欧各国がそれぞれの地域性や得意分野を活かしたスタートアップエコシステムの構築を進めている。これまでに米シリコンバレーに次ぐ70社超のユニコーンを輩出し、日本市場への進出にも力を入れている。
大阪・関西万博では、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンの5カ国が共同で北欧パビリオン「ノルディック・サークル」を運営している。建物は米国やフランスなどが単体出展している「タイプA」と呼ばれる大型パビリオンで、カンファレンスルームを設置し、スタートアップに関する数々のイベントやセミナーを開催している。
そのなかで2025年5月6日に「北欧スタートアップデー@大阪・関西万博」のピッチイベントが招待制で開かれた(写真1)。前半は北欧のスタートアップ支援組織や大学関係者が登壇し、それぞれの市場や各都市での支援、投資状況などを紹介。後半はクリーンテックやインパクト分野スタートアップのピッチイベントが実施され、日本とのオープンイノベーション(協創)の可能性などについても話し合われた。
半導体製造やガラスの3D印刷、発酵などの技術力を提示
ピッチイベントでは、ディープテックやバイオ、クリーンテックなど技術系のスタートアップのほか、フードテックや観光、ショッピングなど幅広い分野のスタートアップ10社が登壇した。主なスタートアップを紹介する。
スウェーデンのAlixlabsとNobula3D
Alixlabsは2019年、スウェーデンのルンド大学からスピンオフしたディープテック企業である。半導体製造分野では世界で唯一ともいえる「ALE(Atomic Layer Etch=原子層エッチング)」技術を展開する(写真2)。独自技術の「APS」をベースに、環境負荷を最小限に抑えながら高性能チップの製造を可能にするほか、APSのIP(Intellectual Property:知的財産)ライセンス供与も進めている。
APSは、次世代半導体の製造効率を高める最先端プロセスとして注目されており、高度なロジックチップやメモリチップの製造へと応用範囲が広がっている。オランダの半導体製造装置メーカーASMLが採用するほか、ラピダスや東京エレクトロン、キヤノンなどの日本企業とも提携している。研究が中心のラボ機能だけでなく、製造機能を提供するファブとしての事業拡大を目指しており、著名な投資家からの投資を受けているという。
Nobula3Dは透明なガラスを3D(3次元)プリンティングする技術を開発するディープテックだ。独自のガラスフィラメントとレーザー堆積技術を開発し、20を超える特許も出願している(写真3)。
3Dプリンターは製造業での利用が広がり、複雑で緻密な形状のものを造れるようになってきているが、透明なガラスで複雑な3D構造を出力するのは難しい。Nobula3Dは、オーダーメイドのプリンティングサービスを提供し、将来的にはプラスチックと同じぐらい簡単で安い技術にしていくという。
すでにガラス状のバネなどが製造できており、それらを含めて市場は大きく成長すると見込まれることから、2025年8月に1000万ドルの資金調達を予定する。現在はEU(欧州連合)を中心にビジネスを展開しているが、日本でのベータテストの協力先を探している。