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アフターサービスでのアセット管理や協業開発のためのSaaS、米PTCが発表

森 英信(アンジー)
2026年6月29日

米PTCは、AI(人工知能)技術を軸に、要件・設計・製造・サービスといった分断された領域をデータでつなぐ「インテリジェント製品ライフサイクル」の実現に舵を切っている。2026年6月16日の記者発表会では、同社のグローバル発表イベント「PTC Next」(2026年6月9日〜10日、米シカゴ)で発表した製造業向けの新SaaS(Software as a Service)やALM(Application Lifecycle Management:アプリケーションライフサイクル管理)システムの市場環境を説明した。

 「創業から約40年経つ私たちにとっても、最大の変革期だ」--。3D CAD(3次元のコンピューターによる設計)ソフトウェアなどを手掛ける米PTC 日本法人 社長執行役員の神谷 知信 氏は、AI(人工知能)技術にソフトウェアベンダーとしてどう向き合うかが問われる現状を、こう強調する(写真1)。

写真1:米PTC日本法人 社長執行役員の神谷 知信 氏

 PTCは、2026年6月9〜10日に米シカゴにて、同社製品群のアップグレードを年2回に凝縮して発表するイベント『PTC Next』を初開催した。

 発表において全編を貫いたのが「インテリジェント製品ライフサイクル」というビジョンだ。要件定義(Define)、設計(Design)、計画(Plan)、製造(Produce)、サービス(Service)、サステナビリティ(Sustain)の6領域を1つのサイクルに落とし込み、データをワンループで循環させる。神谷氏は、現状のものづくりでは「構成する各コンポーネントがつながっていないことが最大の課題だ」と指摘する。

 分断を解消するため、PTCは6領域の中心に構造化された製品データを置き、AI技術で各領域を接続する。他社環境ともオープンでつながる拡張性と、SaaS(Software as a Service)戦略の加速によって「製品ライフサイクル全体を高速化する」(神谷氏)という。

 AI技術の位置付けにおいて神谷氏は「製造業のクオリティや精密性を考えれば、AI技術がアプリケーションを完全に置き換えることは全く考えていない」と見る。そこでは「開発者の仕事をより速く進めるためにAI技術と歩んでいくのが我々のポリシーだ」(同)

保守段階やコラボレーションの領域に新SaaSを投入

 PTC Nextでは、新SaaSであるアセット管理サービス「Orbit」、コラボレーション環境「Jetstream」の2つを発表。そのほかにAIプラットフォーム、エージェント機能、コネクター類など100以上の機能をリリースした。これらはコンセプトベースではなく「既に利用可能な状態で、顧客も実際にテストしながら使っている」(神谷氏)という。

 Orbitは、アフターサービス領域を対象に、納入された設備や機器など稼働しているアセットに関する情報を一元管理する(図1)。対象は保守情報に留まらず「現場での保守やメンテナンスの判断に利用できる製品ライフサイクルの情報を多面的に扱う」(神谷氏)という。

図1:Orbitでは各アセットの現状を単一の画面で表示する

 そのためにPLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)やERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)やIoT(Internet of Things:モノのインターネット)など種々のシステムから情報を取り込み、アセットを軸にしたデータベースに集約する。

 その上でAI技術を稼働させ「新たなビジネス機会の発見や不具合傾向の予兆検知、データの不整合をクレンジングする機能までを担わせる」(神谷氏)

 Jetstreamは、サプライヤーなどとの協業を含めた製品開発のコラボレーションを、Webブラウザ上で完結させる(図2)。そこでは3Dデータや図面、ドキュメントをセキュアに共有できるほか、内蔵の3DビューアやAI技術による要約・提案機能を提供。2026年秋のリリースを予定する。

図2:JetstreamではCADに依存しないデータ共有環境を通じて判断の質を高める

 CADソフトウェア「Creo」、PLMシステム「Windchill」、ALM(Application Lifecycle Management:アプリケーションライフサイクル管理)システム「Codebeamer」と連携し「Jetstream上で交わされた議論や意思決定の根拠を、Windchillの変更プロセスなどに引き渡せる」などする。