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オンチェーン金融×AIの破壊力、3メガ銀トップが予言する“預金滞留”モデルの終焉
「WebX2026」金融セッションから
山本CDTOは「邦銀はかつて高度なCMSにより欧米メガに圧倒された。システムのOS(基本ソフトウェア)が変わる今こそ、グローバル決済の覇権を奪還するチャンスだ」と意気込む(写真3)。
オンチェーン金融とAI技術の融合は、銀行の伝統的な収益構造を破壊し、企業の財務行動を劇的に変化させる。山本CDTOは「オンチェーン化の最大の意義は、金融取引の領域にAI技術が主体として介入できる点にある」と断言する。
これを磯和CDIOは「お札にプログラムを埋め込むようなスマートコントラクト」と表現する。資金口座にプログラム可能なデジタル通貨を置けば、AI技術がリアルタイムの資金繰りを監視し、支払いに必要な分だけをミリ秒単位で借り入れ、余剰金は即座に最も有利な運用手段へ自動で回せるという。
それが実現すれば、企業の銀行口座からは“眠っている滞留資金”が完全に消失することになる。銀行はこれまで、預金口座に滞留する資金を低コストで集め、それを貸し出す“預貸利ざや”で稼いできた。だが「口座に残高が残らなくなる時代」(磯和CDIO)が来れば銀行業の前提は崩壊する。
裏を返せば、事業会社にとっても「現預金をプールしておく」という従来の常識が変わる。オンチェーンCMSが稼働すれば、グループ全体の運転資本を極限まで圧縮し、不要な短期借入を削減してその余力を瞬時に成長投資へ回す「リアルタイムのグローバル財務戦略」が可能になる。これに備えることが、次世代の競争力を左右する。
ブロックチェーンの“トレーサビリティ”でマネロン対策を
オンチェーン金融とAIエージェント普及の最大の障壁になるのが、マネーロンダリング対策(AML:Anti-Money Laundering)などの厳格な法規制だ。特にパブリックチェーンでは身元確認(KYC)が困難である。
上ノ山CDTOは「金融機関としてリスクは取れない」と言い切る。山本CDTO氏も「人間の手による確認を前提とした監視体制のままAIによる超高速・超大量の自律取引が走れば、監視コストが天文学的に跳ね上がる」と警鐘を鳴らす。
このジレンマに対し磯和CDIOは、ブロックチェーンの武器である「データのトレーサビリティ」を生かした逆転の発想を提示する。すなわち「資金の全取引履歴が改ざん不可能な形でつながっている特性を生かし、銀行間で取引監視データを共有する共同インフラを構築できれば、疑わしい取引をAI技術を使って瞬時に検知・排除できる」という。
事業会社にとっても、銀行側の自動検証インフラを活用すれば、自社の取引先審査コストや業務負荷を軽減できる可能性がある。セキュリティと効率化の二者択一をテクノロジーで超える姿勢が、事業会社側の業務設計にも強く求められることになる。
こうした全ての取引が自動化されていく合理化の行き着く先に対し、3行のトップは「人間が果たすべき価値」に関する哲学的な思索を展開する。山本CDTO氏は、2016年頃にMUFGが独自に推進し最終的に普及を断念した「MUFGコイン」の歴史的教訓を踏まえ「単なる技術の導入ではユーザーの体験を変えられない」とする。
磯和CDIOは「定型的な購買行動はAIエージェントに委ねられる。だが企業のM&A(買収・統合)や設備投資といった組織や人生の命運を左右する大きな決断においては、人間の介在価値が極めて高い」ことを力説する。「人間は、正しい論理やAI技術による最適解のみでは、最後の一歩を踏み出す行動変容を起こせない。営業担当者が発する“熱量”や不確実性を共に引き受ける“情熱”といった人間的なアナログ要素こそが、意思決定の最後のトリガーになる」(同)という。
「金融か、非金融か」の境界線そのものが消える
3メガバンクが示した未来戦略は、単なる最新技術の導入にとどまらず、自らの稼ぎ頭である預金ビジネスを自ら創造的に破壊し、産業全体のプラットフォームへ自己変革を遂げるという「金融OSのアップデート」宣言だ。
これから訪れる世界の本質は合併を繰り返した既存銀行の規模拡大ではない。非金融事業者が金融API(Application Programming Interface)を使って独自の金融サービスを提供する「エンベデッドファイナンス」の浸透や、実物資産のトークン化が進む。もはや「金融か、非金融か」という境界線そのものが消失しようとしている。
