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オンチェーン金融×AIの破壊力、3メガ銀トップが予言する“預金滞留”モデルの終焉

「WebX2026」金融セッションから

宇江山 貴紀(ジャーナリスト)
2026年8月21日

アジア最大級のWeb3カンファレンス「WebX2026」(主催:WebX実行委員会、2026年7月13日〜14日)で開催された金融向けセッションに、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)、みずほフィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のデジタル戦略トップが登壇し、デジタル/AI(人工知能)時代の金融業の姿について意見を交わした。

 「WebX2026」(主催:WebX実行委員会、2026年7月13日〜14日)はアジア最大級のWeb3カンファレンス。金融を対象にしたセッション「銀行はトークン化・暗号資産とどう向き合うか — 3メガバンクの未来戦略」には、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)、みずほフィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の3メガバンクからデジタル戦略トップが登壇した(写真1)。

写真1:「WebX」の金融向けセッションに登壇した3メガバンクのデジタル部門責任者。左から、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)の磯和 啓雄グループCDIO、みずほフィナンシャルグループの上ノ山 信宏グループCDTO、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の山本 忠司グループCDTO

決済インフラはステーブルコインとトークン化預金の“両建て”に

 議論は、ステーブルコインやトークン化預金といった「オンチェーン金融」の社会実装にとどまらず、これらとAI(人工知能)技術が融合することで、預金に依存した伝統的な銀行業そのものが根底から覆る歴史的転換点にまで及んだ。国内3メガバンクが、次世代金融インフラを巡る本格的な協調と競争のフェーズに突入した。

 次世代決済インフラとして、パブリックチェーン上の「ステーブルコイン」と銀行預金をデジタル化する「トークン化預金」の覇権争いが続く。これに対し3メガバンクの戦略は「両建て(双方の並行開発)」で一致する。SMFGの磯和 啓雄グループCDIO(Chief Digital Innovation Officer:最高デジタル責任者)は、現金やカードの使い分けを例に「利用者が目的や経済圏に応じて使い分けるものであり、我々は両輪で進める」と説明する(写真2)。

写真2:三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)の磯和 啓雄グループCDIO(Chief Digital Innovation Officer:最高デジタル責任者)

 みずほFGの上ノ山 信宏グループCDTO(Chief Digital Transformation Officer:デジタルトランスフォーメーション戦略・推進責任者)は「移行に伴う顧客のチェンジコストを超える利便性の提示が鍵だ」とする。MUFGの山本 忠司グループCDTOは「預貸の『信用創造機能』」を維持できるトークン化預金に期待を寄せるものの、ステーブルコインが銀行外で普及すれば預金が流出する」と防衛の重要性を指摘した。

 一般の事業会社からすれば、自社の決済・受取手段を単一の規格に依存させるべきではないということになる。マルチチェーンやマルチトークンの到来を前提に、どの決済手段が自社のビジネスフローに最も適しているかを判断する必要がある。そのうえで、金融機関のインフラ整備と並行して機動的に判断できる柔軟な支払い・回収システムを設計する必要がある。

オンチェーン金融により“動かせない資金”はゼロに

 金融取引をブロックチェーンなどのデジタル台帳上で直接記録・実行するオンチェーン金融。この仕組みが事業会社に最も早く届く恩恵が、多国籍企業に向けた「CMS(Cash Management System)」の変革である。

 グローバル企業は現在、世界中の拠点に運転資金を分散させているが、既存インフラでは時差や決済締め切り時刻の関係から24時間稼働が難しく、夜間や週末には“動かせない資金(死に金)”が発生していた。この課題に対し磯和CDIO氏は「オンチェーン金融によりステーブルコインを活用すれば、24時間365日、余剰資金を自律的に集約できるようになる」とする。

 そのうえでメガバンク独自のトークン乱立を防ぐためには「最初から3メガバンク共同のインフラを構築すべきだ」(磯和CDIO)と提言する。上ノ山CDTOも、莫大な固定費が伴うインフラの採算確保に向けては共通インフラ化を支持する(写真2)。

写真3:みずほフィナンシャルグループの上ノ山 信宏グループCDTO(Chief Digital Transformation Officer:デジタルトランスフォーメーション戦略・推進責任者)