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デジタルトランスフォーメーションの司令塔はCIOかCDOか?

SAP NOW、CIOとCDOによるパネルより

中村 仁美(ITジャーナリスト)
2018年8月24日

IT部門の役割は経営者の期待によって変化する

森川:土佐さんと山田さんはCIOです。それぞれでIT部門はどのように変化していますか。

土佐:IT部門の変化は、その部署名の変遷に良く現れています。住友化学の創業は103年前ですが、IT部門ができたのは1955年のことです。当時は「経理部計数課」でした。その後「計数部」「システム部」「情報システム部」になり、現在は「IT推進部」です。

 この背景には経営者の期待があります。人事部や総務部、経理部など設立当初から名称が変わらない部署と異なり、IT部門は未だに「会社のこの機能を担う」という役割が決まっていないのではないでしょうか。だから経営者の期待によって、IT部門の名称もスキルセットもどんどん変わっていくのです。

 私の入社直前まではキーパンチャーが100人ぐらいいました。それが、システム部になってプログラマーやシステムエンジニアに変わります。パッケージ化や自動化が進むにつれ、システムエンジニアというポジションも減り、今や経営の中核を支える役割を担いつつあります。大変だけど面白い。飽きることがない仕事ですね。

山田:住友商事のIT部門は「主計部計数室」から始まりました。その後、総務の通信担当部署と一緒になり、インターネット以降は、データと通信などインフラ面も担当するようになりました。社内オペレーションの効率化、経営に対する情報提供、社内のコミュニケーション/コラボレーションの加速などに従事してきました。

 事業投資がメインになってからは、デューデリジェンスをIT面からサポートする役割も担っています。買収後、IT投資が莫大になると致命的になるからです。デジタルトランスフォーメーションの波で、私たちの業務はビジネスを作るところまで拡大しています。

森川:CDOである楢崎さんが率いる部署は他部署とは全く異なるIT環境を実現されています。

楢﨑:SOMPOのデジタルトランスフォーメーションの拠点となる「SOMPO Digital Lab」は、シリコンバレーと東京に拠点があります。シリコンバレーは最新動向の情報収集やスタートアップ企業とのネットワーキング、プロトタイプ開発が、東京は当社グループのイノベーション促進のコントロールタワーが、それぞれの役割です。

 いずれのオフィスもシリコンバレーのスタートアップ企業の雰囲気にしています。Digital Labのメンバーは基本的に社内システムにはアクセスすることはありません。クラウドをベースに、各人がGPU(画像処理プロセサ)を積んだマシンのうえでAI(人工知能)を自由にいじったりしています。

 これに対し、本体のSOMPOホールディングスのオフィスはいずれも、メインフレームを中心とした“モード1(既存ビジネスの安定的継続を目的としたIT)”のシステムが大勢を占めています。

DXは新たなビジネスを創造することで一致

森川:デジタルトランスフォーメーション(DX)について。みなさんはどのように定義していますが。

土佐:DXを社内では「最新のITを活用して今の仕事を抜本的により良く変えること」という言葉に置き換えています。活用とは「過去の経験と勘だけではなく、データを使えるようにする」こと。抜本的とは「外から見てわかるくらいに仕事のやり方を変える」ということです。

山田:データを活用して、業務のオペレーションやビジネスを大きく改善したり、またはビジネスを創造したりすることと定義づけています。

楢﨑:DXは企業全体のトランスフォーメーションの一要素だと考えています。トランスフォーメーションとは、従来とは全く違ったモノに変身を遂げることです。つまりDXは、データを活用して全く新しいデジタルビジネスを始めたり、これまで取り組んだことがない分野に進出したりと、企業自体を全く違ったモノに変身させることと捉えています。細かな改善ではなく、より大きな変化のイメージです。

明石:ビジネスイノベーションと同義に捉えています。ランドログはコマツの取り組みを完全に越え、異業種混合の連立や、オープンイノベーションによる新規事業を作っていくので、完全に“モード2(新たなビジネスチャンスをもたらすアジャイルなIT)”の会社です。