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デジタルトランスフォーメーションの司令塔はCIOかCDOか?

SAP NOW、CIOとCDOによるパネルより

中村 仁美(ITジャーナリスト)
2018年8月24日

森川:DXの推進において主体はどこで、IT部門はどんな役割を担っていますか。

山田:DXの推進主体は改善対象である業務プロセスのビジネスオーナー、もしくはビジネスを開発する営業部隊だと考えています。ただ、彼らが単独でできるわけではないため、IT部門が技術的要素のヒントを与える役割を担います。IT部門はプロセスオーナーや営業という推進の主体者と共に、ビジネスプロセスの改善を検討するという形が自然だと思います。

土佐:私もビジネスラインが主体だと思います。IT部門の役割は水先案内。ITそのものやITの視点からの危機感をビジネスラインにきちんと伝えていくこと重要です。

 もう一つの役割は、ビジネスラインの人が持っているアイデアや思いつきを形にするための“駆け込み寺”になることです。それにより会社全体の変革を進める役割を担えると考えます。

デジタルトランスフォーメーションについて意見を交わすパネラー

現場のオーナーが仕掛け人を務めるのは難しい?!

楢﨑:「CDOと、その傘下のデジタル組織が主体になるべきだ」という仮説の下、2年間その体制で取り組んできました。現場のオーナーが仕掛け人を務めるのは難しいと考える理由が2つあります。1つは、アジャイルやリーンスタートアップという発想に欠けがちであることです。

 もう1つは、各事業オーナーの仕事は主に“持続的イノベーション”であり、今あるビジネスプロセスを是とし、それを抜本的に良くしようということになりがちなことです。現状を否定する“破壊的イノベーション”を否定しがです。視点が全く異なる外部の組織でなければ、破壊的イノベーションは発生しないのではないでしょうか。

 破壊的イノベーションにおいてIT部門の役割は非常に大事です。IT部門は企業ITを運用し、大量のデータを持っているからです。必ず連携して取り組んでいます。

森川:みなさんが指摘されているモード1、モード2に分けた「バイモーダル」について、どのように感じておられますか。

土佐:分かりやすい概念ですが、自分たちに当てはめてみると、モード1とモード2でも、取り組んでいることはそう変わらない気がします。モード2のITがうまくいき維持運用フェーズに入れば、モード1の人材がいないと役に立たないからです。

 違いがあるとすれば、携わっている人のマインドです。モート1は、きちんと決まったことをやる人で、モード2はお試しをする人です。スーツを着て仕事をするのが好きか、Tシャツ・短パンで仕事するのが好きかという違いですね。

山田:モード1とモード2は「守り」と「攻め」とも言われます。ですが実際は、中間的なITもあります。しかも守りと攻めの定義が人によって違います。開発方法も、ウォーターフォールかアジャイルかと比較しますが、ウォーターフォールしかできない、アジャイルしかできないという人はいません。モード1とモード2の境目はあいまいで、私は虹色のようにとらえています。

楢﨑:お2人のご指摘通りだと思います。モード1とモード2は明確には分けられません。当社は元々、モード1だけの会社でしたが、私はモード2を推進する役割を担っています。山田さんの「虹色理論」は腹オチしました。本来、100%モード1の人、100%モード2の人はいません。ですが、私の部署では、あえて「モード2です」と断言し、存在意義を高めています。

明石:コマツはモード1のイメージが強いですが、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)がこれほど認知されていない20年前から、建設機械に稼働状況を管理するための「KOMTRAX(コムトラックス)」を標準搭載してきました。現在は毎日、世界40万台の建機の情報を更新・運用しています。その情報を使って“次の一手”を打つためにランログはコマツから切り離されました。コマツグループの中でモード2の役割を担うためです。