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農業を子どもたちに魅力ある職業に、次世代のゆずづくりを北川村×NSSOLが切り拓く!

製造現場で培った見守り技術を活用し、農作業現場を安心・安全に

2022年1月11日

ゆず作りのノウハウを次世代に伝えたい

野見山  ゆず栽培は北川村の基幹産業です。ゆず農家が多いこの地で、子供たちが伸び伸びと育っていくためには、ゆず栽培で得られる収入によって安心して生計を立てられることが重要です。

 そのためには売り手である農家側の努力も大切ですが、行政としてもしっかりとゆず農家を支援していく必要があります。その一環として中山間地域においても基盤整備事業ができるよう要件を緩和いただいた通称「北川モデル」を進めています。斜面に位置したり、細切れだったりするゆずの園地を大規模で機械化しやすい環境に改善しようとする取り組みです。

──北川モデルの延長としてスマート農業の実証プロジェクトがあるわけですね。

野見山  ゆず栽培は作業の大半を人手に頼っています。「ゆず農家はしんどい」というイメージが強く、北川村でも、ゆず栽培に取り組もうという若者は多くないのが現状です。こうした状況を乗り越え、ゆず栽培を持続的な産業としていくためには、人手だけに頼るのではなく先端技術を積極的に取り入れ、若者や子どもたちが将来に夢を持てる農業への進化が欠かせません。

 赴任直後から「最新技術を活用したスマート化がゆず栽培の大きな武器になる」と、北川村のみなさんに訴えていたところ、田所社長や、スマート農業の支援経験があった日鉄ソリューションズ(NSSOL)などと知り合えました。

 田所社長から、スマート化に向けた技術と知恵を試せる場所を提供していただけたことが、農林水産省が公募した「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」(課題番号:果2G07)への参加につながったのです。

 正式な課題名は、「柑橘類の超省力・早期成園化実証を通した持続的中山間農業構築モデル事業の実証」で、農業・食品産業技術総合研究機構が事業主体になっています。

田所  私自身、土佐北川農園でゆずを扱い始めたのは15年ほど前のことで、それまでは、ゆず栽培の経験がなく当初は戸惑うことも少なくありませんでした。幸いにも指導してくださる方がいたため軌道に乗せることができました。そうしたゆず作りのノウハウを次世代に伝えていきたいという思いがあります。

 高知県はビニールハウスなどを使った施設園芸が盛んで、そこではIoT(Internet of Things:モノのインターネット)などデジタル技術の活用が始まったと聞いていました。ただ、ゆず園のように屋外の畑で栽培する露地栽培では、まだまだスマート化の流れは起こっていませんでした。

 そうした中で実証プロジェクトのお話を聞き、自分たちにも新しいことが起こせるのではないかとの期待から実証プロジェクトへの参加を決めました。

――実証プロジェクトの具体的な活動内容を教えてください。

野見山  本プロジェクトでは、ゆず農家の労働生産性の向上を柱に、2020年4月からの2年計画で、活用が見込める各種技術を土佐北川農園で幅広く検証しています。

 具体的には、農薬散布などを目的としたドローンや、収穫したゆずを運ぶ自走搬送台車、収穫後に利用する画像センサー付き自動選果機などを取り入れています。負荷の高い人的な作業を少しでも機械が肩代わりすることで、効率を高めると同時に、作業者のストレス軽減にも寄与できないかと考えています。

 例えば、ゆず栽培での農薬散布は毎年、4月から9月にかけ集中して実施します。しかし、傾斜地の険しい道をたどって農薬を運ぶだけでも一苦労です。散布時も、農薬が身体に付着するのを避けるため長袖・長ズボンを着用するので、とりわけ夏場の作業は過酷です。

 これらの取り組みにより作業効率がどの程度向上しているのか、作業者のストレスがどの程度軽減できているかを測定するために、NSSOLの「安全見守りくん」を活用しています(図1)。同社から製造現場での利用方法の説明を聞いたり、導入に向けたアドバイスを受けたりして採用を決めました。

図1:「安全見守りくん」の装着イメージ(左)と、取得できるデータの例