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農業を子どもたちに魅力ある職業に、次世代のゆずづくりを北川村×NSSOLが切り拓く!

製造現場で培った見守り技術を活用し、農作業現場を安心・安全に

2022年1月11日

製造現場の作業員の安全を見守る仕組みで作業効率の変化を可視化

森屋 和喜(以下、森屋)  NSSOL IoXソリューション事業推進部の森屋 和喜です。安全見守りくんは、工場など製造現場での安全・安心を確保するために開発・製品化した仕組みです。ウェアラブルデバイスで作業者の位置やバイタルデータなどを収集することで、遠隔地から作業者の状況をモニタリングし、異変をいち早く検知します。

NSSOLの森屋 和喜 氏

 製造業などに強みを持つ当社ですが、IoT/AI(人工知能)といった領域では、農業分野におけるデータ分析も手掛けています。そうした経験も踏まえ、安全見守りくんで収集した各種データから、スマート化の前後での作業効率の変化を分析・算出してはどうかと提案しました。

野見山  その安全見守りくんを2021年4月からは、従業員の見守り用途にも使っています。実証実験を続ける中で、田所社長から「作業者の安全確保に役立てられるのではないか」との相談を受けたのが、きっかけです。

 安全確保は農業における重要課題の1つです。日本でも年間数百人の方が農作業中の事故で亡くなっています。その点で無視できない活用法だと判断し、作業効率の可視化に加え、安心・安全に向けた見守り機能の検証も始めました。

田所  ゆず園地は傾斜地であることが多く、肉体的につらい作業もあれば、作業中の転倒が大事故にもつながります。幸い、これまでにそうした事故は起きていませんが、熱中症などで作業中に倒れるようなこともゼロではありません。広い園地で作業者の状態や場所を把握できれば、万一の際にも迅速な対応につなげられます。

農作業中の万一の事故への迅速な対応を支援

――安全見守りくんでは実際に、どんなデータをどうやって取得しているのでしょう。

高畑 紀宏(以下、高畑)  NSSOL IoXソリューション事業推進部、高畑 紀宏です。実証プロジェクトでは、作業者全員にスマートウォッチを着用してもらい、位置データや加速度データ、脈拍データを取得することから始めました。

NSSOLの高畑 紀宏 氏

 2021年4月からは、作業者に定期的な休憩や水分補給を促せるように、気温と湿度から簡易的にWBGT値(暑さ指数)を算出する環境センサーの装着も始めています。これらのデータは携帯電話網による転送を基本に集約していますが、園地内には携帯圏外のエリアもあるため、Wi-Fiによる無線通信環境を併用するようにしています。

 安全見守りくんは工場での利用を想定したサービスであり、実証プロジェクトでも仕組み自体は大きく変更していません。ただ、データの分析・活用においては、農業での使い方を踏まえて調整しています。

 例えば工場内では走ること自体が危険な行為として厳に禁止されています。そのため加速度センサーで大きな衝撃を捕捉すれば、それは事故の発生と捉え、監視用モニターに通知します。しかし園地では日常的な走ったり、トラックの荷台から飛び下りたりといった動作も、加速度センサーの値からは衝撃や転落として検知してしまいます。こうしたデータをどう判断するべきかといった点を農作業の実態に合わせて見直しています。

――安全見守りくんを使ってみての感想はいかがでしょうか。

小原 知紗(以下、小原)  土佐北川農園でゆずの栽培に携わっている小原 知紗です。作業時の安心感は格段に増しています。作業者は園地内では離れて作業することが多く、これまでは休憩時間などに同僚が戻らないと心配して携帯電話で連絡したり、携帯がつながらなければ探しに出かけたりということも、しばしば起こっていたからです。

土佐北川農園の小原 知紗 氏

 作業時にスマートウォッチや環境センサーを身に付けていることへの違和感は特にありません。