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農業を子どもたちに魅力ある職業に、次世代のゆずづくりを北川村×NSSOLが切り拓く!

製造現場で培った見守り技術を活用し、農作業現場を安心・安全に

2022年1月11日

広大な園地で同僚の居場所が分かることが安心感に

田所  農園の経営者として作業員の安全確保は大きな課題です。それが今は、各人の居場所についてモニターを一目見れば確認でき、スタッフ総出で探すこともなくなりました。車で移動中であれば、GPS(全地球測位システム)のデータから移動中のマークがモニターに表示されます(図2)。

図2:「安全見守りくん」による園地での行動分析の例(地理院タイルに安全見守りくんデータを追記して掲載)

 大きな事故が発生しているわけではありませんが、最悪の場合も心拍データから作業員が危機的状況かどうかを判別できるという安心感はあります。

野見山  NSSOLによる改良によって、事故による転落だと判断できるほど強い衝撃が検出されれば、モニターにアラートが通知されるようになっています。今後も微調整を重ねることで、大事故の場合には即座に救急車を呼べるような仕組みができれば良いと考えています。

藤本 慎也(以下、藤本)  NSSOL IoXソリューション事業推進部 藤本 慎也です。安全見守りくんは、安全確保のために複数の機能を備えています。例えば、危険な場所に立ち入ったことを位置データから検出し、作業員に知らせる機能です。

NSSOLの藤本 慎也氏

 ただこれも、工場なら危険な場所を容易に設定できるのですが、残念ながら園地のどこが危険かまでは現時点では特定できていません。そのためのデータ分析を急いでいるところです。

 一方で環境センサーのデータからは、農薬散布時の体感温度が外気より2~3度ほど高いことを突き止めました。今後も農作業ごとに細かな分析を続け、そこで得られた知見やノウハウを積み上げることで、農作業の安全確保にもできる限り早い段階で広く利用できるようしたいと考え取り組んでいます。

ドローンによる農薬散布では労働時間の8割削減を確認

――当初の目的だった安全見守りくんのデータを使った、スマート化による作業効率改善の可視化については、効果が見えてきていますか。

野見山  非常に順調です。現在、NSSOLが最終的な取りまとめを進めています。2020年度の状況については、例えばドローンによる農薬散布では、人手による作業と比較して労働時間が8割削減できる可能性があることが数値として得られました。

 安全見守りくんのデータからは、作業員が動いているか止まっているかも判別できます。2022年2月に提出予定の成果報告書では、そうしたデータも活用し、時間だけでなく質の面からも作業の改善度を評価したいと考えています。

――今後の展望について教えてください。

野見山  今回の実証実験は2022年3月末をもって、ひとまず終了します。ですが、北川村でのゆず農業のスマート化はむしろこれからが本番です。このプロジェクトによりスマート化の具体的な中身が徐々に周辺農家にも伝わり、村内でドローンによる農薬散布を試す農家が現れるなど、取り組みが広がりを見せつつあります。

 多くの農業地域と同様に、北川村も農作業者の高齢化が進んでいます。今回実験した先端技術の活用を一層推進し、若者のゆず産業離れを食い止めるのはもちろんですが、高齢者が、ゆず栽培を続けられる環境を実現することで、北川村を世界に通じるゆずの産地として改めて盛り上げていくことが今後の目標です。

農業とデジタル技術のタッグが新たな活力を生む

田所  若者がゆず栽培を始めようとしても、熟練者の経験は伝えにくいですし、経験に基づくやり方に納得できない場面も多いのだと思います。しかし、デジタル技術を使ったスマート化により、データや映像を活用した技術継承が可能になると期待しています。

 海外への輸出においても、EU向けは使用できる農薬が厳しく制限されています。栽培時に細かなデータを蓄積することで基準に沿っていることを証明できるなど、データを収集・分析できることのメリットは大きいはずです。

 そうした面を含めてNSSOLが持つ経験やノウハウに基づく協力が継続されることを期待しています。新たな農地整備が進む中、農業従事者とタッグを組むことでスマート化を追い風にした新たな活力を必ずや生み出せるのではないでしょうか。

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日鉄ソリューションズ