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あいおいニッセイ同和損保、自動運転時代の保険商品をビッグデータ解析で実現

中村 仁美(ITジャーナリスト)
2020年10月28日

安全運転スコアの正確さが商品価値を決める

 テレマティクス自動車保険が、安全・安心な車社会に貢献することは間違いない。ただ、運転の安全度によって保険料金が変わるPHYD型の場合、キモになるのが、安全運転スコアの正確さだ。スコアが不正確だと、「保険料を割り引きすぎて会社の収益が得られないだけでなく、ドライバーの納得性が得られず商品として成立しない」(同)からだ。

 この正確さについて、あいおいニッセイ同和損保では、「十分な正確さを実現できている」と梅田氏は胸を張る。

 元々、保険業界では、保険料の策定にビッグデータ解析を実施している。だが、梅田氏は「テレマティクス自動車保険では、保険料策定とは比べものにならないほどのビッグデータ解析が必要になる」という。

 たとえば、数万人分の走行データを1年間蓄積すると、数億〜数十億レコードにもなる。その走行データと保険実績のデータから安全運転スコアを導き出すためには、ビッグデータのサマリー、分析基盤の構築、アルゴリズムの構築というタスクが必要になる。だが、「これらのタスクは保険会社単独では解決できない」と梅田氏は明かす。

図3:テレマティクス自動車保険に不可欠なビッグデータの解析環境と、その実現に必要なタスク

 迅速、かつ正確、低コストに実現するため、あいおいニッセイ同和損保は、日本IBMのサポートを受けることを選んだ。走行データと外部データの紐付け、リアルタイムな分析処理の仕組みには「IBM IoT Connected Vehicle Insights(CVI)」を活用している。

 CVIは、コネクテッドカーのためのプラットフォームだ。走行情報と地図情報、環境情報を重ねた動的地図を生成し、車両の走行状況や経路のリアルタイムな分析を可能にする。各車両がどこを、どのように走行しているのかに合わせて、その車両に影響するイベントや必要な情報を通知する。

 テレマティクスの活用により、事故の自動通報や可視化、過失割合の自動判定も可能になる。梅田氏は、「保険金支払いまでの期間を大幅に短縮できる」と話す。あいおいニッセイ同和損保は、「テレマティクス損害サービス」として2019年4月から提供している。本サービスも業界初でビジネスモデル特許を取得している。

 さらに同社では、「事故のない安全・安心なクルマ社会の実現への貢献」を目指し、CASE/MaaSに向けた自動車保険商品/サービスの開発を進めている。その第1弾とも言えるテレマティクス商品が、2021年1月に発売する「自動運転対応テレマティクス自動車保険」。自動運転中の保険料を無料にするもので、「これも日本初だ」(梅田氏)という(図4)。

図4:自動運転中の料金を無料にする「自動運転対応テレマティクス自動車保険」

 梅田氏は、「テレマティクスからCASE/MaaSへと対応することで、より利便性が高く、安全・安心なモビリティ社会の実現に貢献したい。自動運転の安全性を保険料に反映することで、自動運転の健全な発展・普及を保健面で後押ししたい」と力を込める。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名あいおいニッセイ同和損害保険
業種金融・保険
地域東京都渋谷区(本社)
課題自動車の技術革新が進み自動運転などが可能になる中で、そうした技術革新を活かした保険商品/サービスを提供する
解決の仕組みコネクテッドカーやドライブレコーダーなどから取得できる車の走行データを解析し、より安全・安心につながるように保険商品/サービスを設計する
推進母体/体制あいおいニッセイ同和損害保険、日本IBM
活用しているデータ自動車の走行データなど
採用している製品/サービス/技術リアルタイム分析処理基盤「IBM IoT Connected Vehicle Insights(CVI)」(米IBM製)