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あいおいニッセイ同和損保、自動運転時代の保険商品をビッグデータ解析で実現
自動車業界の技術革新は、損害保険など関連領域まで巻き込んで進んでいる。そうした中、いち早くテレマティクス自動車保険に取り組んできた、あいおいニッセイ同和損害保険は、そのノウハウとインフラを武器に次の保険/サービス作りに取り組んでいる。同社自動車保険部 テレマティクス開発グループ長の梅田 傑 氏が、2020年9月に開催された「Think Summit Japan」(主催:日本IBM)に登壇し、自動運転時代を見据えた保険商品のあり方などを解説した。
自動車業界は現在、「CASE(Connected:コネクテッド、Autonomous:自動運転、Shared:シェアリング、EC(電気自動車)」やMaaS(Mobility as a service:移動手段としてのサービス)などの台頭により、大きな変革が起こっている。
たとえば2020年4月1日、道路交通法が改正され、高速道路など一定条件下においては「レベル3(条件付き自動運転)」の自動運転車が公道を走れるようになった。自動車メーカー各社は自動運転車の開発を加速させている。
あいおいニッセイ同和損保が先駆けたテレマティクス保険
こうした影響は、自動車を対象に損害保険などを提供してきた保険業界にも及んでいる。そうした中、あいおいニッセイ同和損害保険が今、最も注力しているのがテレマティクス自動車保険だ。
テレマティクスは、テレコミュニケーション(通信)とインフォマティクス(情報工学)を掛け合わせた造語である。同自動車保険は、スマートフォンやドライブレコーダーなどの通信機能付き車載器から走行データを取得し、それに基づいて保険料を割引したり新しいサービスを提供したりする。
自動車保険部 テレマティクス開発グループ長の梅田 傑 氏は、「当社は自動車保険分野において、独自性ある先進的な商品/サービスを提供してきた自負がある」と胸を張る。例えば、自動車保険では今では“当たり前”になっているロードサービスも、同社が社に先駆けて投入したサービスだ。
あいおいニッセイ同和損保がテレマティクス自動車保険「PYAD」を発売したのは、15年前の2004年4月。トヨタ自動車が提供するテレマティクスサービス「G-BOOK」と連動する新しい保険商品で、毎月の正確な走行距離データを取得し、1キロ単位で走った分の保険料を支払う。
走行距離を反映する保険は現在、通販型の保険会社を中心に販売されている。だが梅田氏は、「年間の走行距離は自己申告で、3000キロメートル以下、3000キロメートルから5000キロメートルといった区分で保険料が設定されている。本当の意味での『走った分だけ』の保険料にはなっていない」と指摘する。
その後、テレマティクス自動車保険は欧米を中心に広がる。2015年、同社はイギリスのテレマティクス自動車保険の大手ITBを買収した。ITBが持っていた走行距離を分析するノウハウとともに「若者を安全運転に導くためのノウハウを手に入れた」(梅田氏)という。
これらノウハウを元に2018年4月、日本国内で初めてのPHYD(Pay How You Drive:運転行動連動)型のテレマティクス保険「タフ・つながるクルマの保険」を発売した。トヨタとの共同開発で、コネクテッドカーから取得できるデータに基づいて安全運転の度合いを測定し、保険料が決める。安全・安心な社会に貢献するモデルであると評価され、2018年のグッドデザイン賞も受賞した。
だが、同保険の対象は、あくまでもコネクテッドカーになる。そこで対象を広げるために開発のが、2020年1月に発売した「タフ・見守るクルマの保険プラス」である。
あいおいニッセイが提供するドライブレコーダーを使って走行データを取得し、安全運転の度合いを測る。他の大手保険会社もドライブレコーダーを有償で提供する商品を販売している。だが最大の違いは、「安全運転の度合いによって保険料が割引になることだ」と梅田氏は言う。2020年10月からは、より簡単で手軽な「タフ・見守るクルマの保険プラスS」も発売する。