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DXを支えるのはITをバックボーンに持つ人材だ

味の素の白石 卓也CEO補佐

奥平 等(ITジャーナリスト/コンセプト・プランナー)
2022年4月26日

DXを土台にオペレーション変革と事業モデル変革を一体で推進

 その味の素はパーパスドリブン経営に取り組んでいる。そこで目指すのは、同社の強みであるアミノ酸を基軸に「世界の健康寿命の延伸」に貢献すること。その推進に向けて、CEO(最高経営責任者)の直下に「DX推進委員会」を立ち上げ、それを土台に(1)全社オペレーション変革を担う「OX推進部」と、(2)事業モデル変革を担う「R&B(Research and Business)企画部」を置いている。

 DX推進委員会はCDO(最高デジタル責任者)が、OX推進部はCXO(最高変革責任者)が、R&B(Research and Business)企画部はCIOがそれぞれリードし、これらCDO、CXO、CIOがCEOを核に連携し「ワンチーム体制で変革を推し進めている」と白石氏は説明する(図2)。

図2:味の素におけるデジタル改革の推進体制

 同体制では、「組織横断型での実行を徹底するとともに、縦軸で意思決定・実行のスピードアップを図れるようルールを明文化した。さらに社外の専門家との提携や外部人材の採用にも積極的に取り組んでいる」(白石氏)

 そうした中から、ヘルスケア領域の新製品も生まれている。例えば、三大疾病(がん・脳卒中・心筋梗塞)と認知機能の低下、糖尿病のリスクを1回の採血でチェックできる検査キット「アミノインデックス」や、睡眠をサポートする「グリナ」、認知機能の維持をサポートする「脳活セブンアミノ」などだ。

 スマートフォン用アプリケーションやコンテンツも提供している。生活習慣を認知機能の視点でスコア化する「100年健脳手帳」や、歩数記録やクイズへの回答でマイルを貯める「aminoステップ」などのサービスを提供している(図3)。

図3:ヘルスケア領域のスマホアプリやコンテンツの例

 今後は、「巨大市場といわれる未病マーケットへの取り組み」(白石氏)を推進する。「身体が“食”で作られるという観点からも、毎日の食事が大切な要素であることは明白だ。美味しいものを食べて健康になれるのが理想」(同)になる。

 ただ白石氏は、「食と健康の両立は難しい」とも指摘する。なぜなら「最もフェイクニュースが多いテーマの1つであり、真逆の説が飛び交うこともしばしばだ。気にし始めると選択肢がなくなってしまう。『分かっていても止められない』という人間の心理もある」と説明する。

 最終的には、食と健康のバランスを取る必要があるが、「そのためには1人ひとりが健康リテラシーを高める必要がある。そのための“次の一手”の開発に余念がない」と白石は力を込める。