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DXを支えるのはITをバックボーンに持つ人材だ
味の素の白石 卓也CEO補佐
新規事業創出に向けたデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが本格化するなか、「誰がその推進役を担うべきか」という人材面の課題が急浮上している。この課題に対し、味の素でCEO補佐を務める白石 卓也 氏が、東京で2021年11月に開催された「CIO JAPAN SUMMIT 2021」(主催:マーカスエバンズ)に登壇し、味の素が取り組む新規事業創造の現状とともに、新たな価値創出においてCIO(最高情報責任者)が担う役割を提言した。
白石 卓也 氏は2020年5月、パーパスドリブン経営に取り組む味の素に参画し、現在はCEO補佐として新規事業の推進に携わっている。これまでは、ローソンにおけるデジタル改革の責任者、ウォールマートジャパン/西友のCIO(最高情報責任者)として、デジタルトランスフォーメーション(DX)の第一線で活躍してきた。自身の歩みについて白石氏は、次のように語る。
「コンサルティング会社と事業会社、外資系と国内企業のそれぞれの立場でITの変遷を垣間見てきた。その知見・経験を活かしつつ、より事業に近い役割を果たせるのが現職を選んだ理由だ。新規事業創出というミッションは俯瞰的要素が求められるだけに、まさに希望通りのチャレンジになった」
IT経験者にアドバンテージを与える3つの素養
ITをバックボーに持つ白石氏は今、味の素のサプライチェーン全体と「食」の未来像を俯瞰しながら、同社の新規事業創出に取り組んでいる。「日本の製造業にはDXで成果を出せる可能性がある」といるからだ。その理由として以下を挙げる。
・商品(ソリューション)を作っている
・研究開発のアセットがある
・D to C(Direct to Consumer:メーカー直販)の可能性がある
・サプライチェーンのアセットを最適化できる余地がある
・商品+サービス(ハードウェア&ソフトウェア)を創出できる
・ブランドマネジメントによる価値を高められる
ただし、日本のDXの取り組みがグローバルからは遅れているとする声が少なくないように、現状では次のような課題があるとも指摘する。
・アセットの棚卸し/評価ができていない
・商品からサービスへの転換ができない
・減点主義で失敗を許容できない
・スキルセットがミスマッチしている
・カルチャーギャップや、スピード感、アジャイルの理解が不足している
白石氏は、「製造業が持つノウハウの競争優位性はギリギリまだ残っている。大企業が変わればグローバルで戦えるし、スタートアップ企業ともパートナーシップを組むことで共に成長できるモデルが作れるのではないか。優秀な人材を抱える大企業が事業のサスティナビリティ(持続可能性)を保つことは使命であり責任だ」と力を込める(図1)。