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コスモ石油、競争力強化に向けプラントのデジタルツインにより意思決定速度を高める
「Cognite Atlas AI Summit in Tokyo」より、コスモ石油 工務部の吉井 清英 氏とコスモエネルギーホールディングス IT推進部の八谷 鉄正 氏
経営、現場、IT部門、PMO、パートナーが一体になり全体を巻き込む
デジタルツインプロジェクトが2年前倒しで進行している理由を吉井氏は、「経営、現場、IT部門、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)、パートナーの5つの機能・組織が一体になり連携して取り組んだためだ」と説明する。特に「主役となる現場には『チェンジエージェント(変革を推進する人)』を任命し、CDFのファンを作りながら製油所全体を巻き込んでいった」(吉井氏)
IT部門との連携では、「データの専門家がイネーブラーになって現場を支援する」(吉井氏)。PMOは、現場と経営をつなぎ、イネーブラーを巻き込みながらプロジェクトをマネジメントしていく。そのうえで吉井氏は、「経営の役割も非常に重要だ。ビジョンの共有と強力なコミットメントが求められる」と強調する。
パートナーとの連携では、「ユーザー目線とユースケースに基づくソリューションの提供を意識した協業がポイントになる」(吉井氏)。本プロジェクトではCogniteがパートーナーであり、うまく協業できたとする。吉井氏は「これら5つが一体になった際に、主役である現場が突き抜け、デジタルツインを目指すドイツの政策である『Industry4.0』の実現と超越が可能になる」と力を込める。
吉井氏の言を受け、八谷氏はIT部門の視点から成功の理由を、こう説明する。
「製油所のシステムに大がかりな手当てなしにデジタルツイン化が可能なアーキテクチャーとしてCDFを採用した。データの関連付けをとっても、従来は人手でデータとにらめっこしながら突合しなければならなかった。それがCDFでは、生成AI技術とCogniteが保有するルールにより、かなり高精度で関連付けができ、工数を大幅に削減できている」
さらなるユースケースとして吉井氏は、設備の信頼性を高めるための「RCoE(Reliability Center of Excellence)」を挙げる。2024年11月には千葉製油所(千葉県市原市)内にCDFを活用したユースケースの応用として、保全専用の統合モニタリングルームを開設する予定である。「各地に散らばっている予兆保全に関するデータを収集し、千葉製油所から各地とコラボレートしながら保全できる仕組み」(吉井氏)になる。
統合モニタリングルームは他の製油所にも展開し、「デジタルプラント化の完全実装を、当初計画より2年前倒しの2025年度中に実現する予定だ」と吉井氏は胸を張る。「現場のエンジニアは、AIシステムと自然言語ベースで会話することで、書類やデータなどを素早く取得できるようになる」(同)と期待する。
製油所外とのエコシステムを構築し「デジタルレイバー」の導入も
デジタルツインの実現含めコスモ石油は、デジタル化の段階を6つの「DI(Digital Integrity:デジタル整合性)」に分けている(図2)。2023年に「4DI:データ民主化)を実現した。そのカギになった技術は、コンテキスト化や生成AI、SaaS(Software as a Service)だった。現在は、上述してきたように「5DI:デジタルツイン)」の段階まで進んでいる。
次の段階として「6DI:エコシステム」の実現を目指す。吉井氏「当社には製油所以外にも多くの設備がある。それらも統合し、仮想空間上で全てをシェアできる状態にしていきたい」と意気込む。その過程では「定型業務を自動化する『デジタルレイバー:(Digital Labor:仮想知的労働者)』の実用可能性を探りたい」(八谷氏)ともいう。
データ分析の分野では既に、最適解を導き出すための自律処理が実現されている。今後は、「事象やデータから状況をリアルタイムに判断し、最適な処理を自ら生成して実行する自動化の時代が到来する」とされる。八谷氏は、「この機械の、こういう故障なら、誰に通知し、どう対応すればよいかが、生成AIとプロセスの事前定義を組み合わせることで、人を介さずに実行できる世界の実現を目指したい」と意気込みを隠さない。
企業/組織名 | コスモ石油 |
業種 | 製造 |
地域 | 東京都港区(本社) |
課題 | 需要や社会環境の変動に対処できるよう石油事業の競争力を強化したい |
解決の仕組み | 製油所のデータを統合してデジタルツインを構築し、データに基づいた意思決定や遠隔からの保全業務支援、エンジニアの技術継承などを可能にする |
推進母体/体制 | コスモ石油、ノルウェーのCognite |
活用しているデータ | プラントや設備の図面、点検記録、運転データ、保全計画など |
採用している製品/サービス/技術 | 「Cognite Data Fusion」(ノルウェーのCognite製) |
稼働時期 | 2023年11月(Cognite Data Fusionの全社利用開始時期) |