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シール材のバルカー、プラントの配管継手の状態を判定するサービスを開始
産業設備用シール材メーカーのバルカーは、SaaS(Software as a Service)事業の一環として、配管や機器を接合するフランジ面の状態を診断するサービスを2025年11月27日に開始した。経年劣化による異常を早期に発見することで、プラントの安定稼働に向けた保全計画の精度向上につなげられるとする。同日に発表した。
ゴムパッキンなどのシール材を製造するバルカーが2025年11月27日に開始した「フランジカルテ」は、配管や機器の接合継手であるフランジ面の状態を計測し、診断データおよび補修・点検履歴を管理するサービス(図1)。継ぎ手からの漏えいにつながる経年変化などによる異常を早期に発見でき、プラントの安定稼働に向けた保全計画の精度を高められるとする。
フランジカルテでは、フランジの表面を3D(3次元)スキャナーで計測し、得られた点群データから、ひずみや傷、汚れなど局所的な凹凸を検知し数値化する。向かい合っている2つのフランジ面も測定し、面の角度などから、すき間やズレを算出する。これらを事前に設定した規格や基準と照合し、フランジの状態の良し悪しを判定する。
結果はクラウド上で管理し、経年劣化の進行具合などをグラフ表示するなどで時系列に可視化する。メンテナンス担当者は、得られた情報を元に、突発的な故障を防ぐCBM(Condition Based Maintenance:状態基準保全)の実現や、適切な交換・補修時期の決定に利用できるとする。
管理するデータは、フランジごとの異常の種類・位置・発生時期と、補修・交換記録など。フランジの設置場所や配管番号、施工履歴などのメタデータを紐付けることで、整備実績などを併せて管理できる。過去の漏えいの有無といったトラブル情報や、日常点検の結果も併せて管理し、TBM(Time Based Maintenance:時間基準保全)も支援する。
バルカーはSaaS事業とプラント工事管理サービス「VALQUA SPM」(バルカー製)などを提供している。今後は、VALQUA SPMとの連携を強化し、施工時のトルクの締付けデータや作業手順などを統合した基盤へと発展させる計画だ。そのためフランジカルテの開発では、既存サービスで蓄積した知見を元に、データの連動性を高めているという。
加えて、産業技術総合研究所との共同研究にも取り組み、フランジの状態に応じた最適な締付トルクを提案する機能の開発を進めている。熟練作業員の技能を抽出した締付けガイダンスも開発し現場支援の幅を広げる方針だ。計測と診断、履歴管理を一体化することで、プラントの「リークゼロ(漏れゼロ)」を目標にする。
バルカーによると、フランジ漏えいが発生すると設備停止やシール材の交換によるダウンタイムが発生し、工期の遅れや追加コストのリスクがある。フランジ面の点検は、熟練者の目視や触感に頼っており、その評価精度にバラツキが発生したり、経年劣化を捉えきれなかったりしている。
| 企業/組織名 | バルカー |
| 業種 | 製造 |
| 地域 | 東京都品川区 |
| 課題 | フランジ面の状態確認は熟練者の経験に依存し評価精度にバラツキがあり、プラントの安定稼働を妨げるリスクがある |
| 解決の仕組み | フランジ面を3Dスキャナーで計測し、ひずみや凹凸、ズレなどの定量数値から状態を判断できるようにする |
| 推進母体/体制 | バルカー |
| 活用しているデータ | フランジ面の点群データ、ひずみ・凹凸・ズレなどの解析結果、異常の種類・位置・発生時期、過去の補修・交換履歴など |
| 採用している製品/サービス/技術 | 3Dスキャナー |
| 稼働時期 | 2025年11月27日(サービスの提供開始日) |
