- Column
- 大和敏彦のデジタル未来予測
デジタルテクノロジーが変える社会【第1回】
(3)ネットとリアルの融合
Amazonの売上高は2015年に7630万ドルになり、世界の小売業ランキングのトップ10入りをした。2010年から2015年の平均成長率は20.8%で他社を大きくリードし、この勢いは今も続いている。さらにAmazonは、ネットでの成功と、そこで培ったデジタルテクノロジーによって、実店舗のビジネスモデルやビジネスプロセスをも大きく変えようとしている。
具体的には、高級スーパーである米ホールフーズを買収し最大42%の値下げを実施したり、イノベーティブなリアル店舗を試行したりしている。コンビニスタイルのAmazon GOでは、コンピュータビジョンやセンサー、AI(Artificial Intelligence:人工知能)によって“Just Go Out”というチェックアウトなしの形態を実現した。リアル書店のAmazon Booksでは、AI応答や表紙の写真による検索、スマホアプリによる決済を可能にしている。
デジタルテクノロジーによる変革によって、ネットとリアルの境界が大きく変わっていく。ネット企業は、自身の成功を可能にしたデジタルテクノロジーによるプロセスやビジネスモデルをリアルな世界に適用することで、より高い顧客価値や競争力を生みだし、ビジネス拡大を図っている。ベンチャー企業を含め、このような動きが盛んであり、ネット企業の存在感を強めている。従来ビジネスにおいて、まだまだ強みがあると感じていても、デジタルトランスフォーメーションを進めなければ、変化するビジネス環境に対応ができず競争力を失ってしまう可能性がある。
破壊的イノベーションは既に様々な分野で起きてきた
デジタルによる破壊的イノベーションは、これまでも様々な分野で起きてきた。新聞や本はネット情報や電子出版に、メディアは音楽や映像配信ビジネスに、商品販売はEC(Electric Commerce)に、金融はインターネットバンキングや電子決済によって、それぞれ大きく変貌した。
米Uber Technologiesがタクシー業界に、米Airbnbがホテル業界に起こした破壊的なイノベーションも同様だ。デジタルビジネスのスピードの速さによって急拡大を実現している。この流れは、様々な分野でリアルとデジタルテクノロジーが掛け合わされることで、さらに大きな変化を引き起こそうとしている。
つまりデジタルテクノロジーは、プロセスやサービス、製品の支援など、あらゆる分野で、ビジネスそのものを変革し、新しい製品/サービスや、新しい価値、新しい仕事の仕方を実現するための中核になりつつある。
このような状況においてデジタルトランスフォーメーションを実現することは、自社の変革のスピードを高め、企業の成長や会社価値、利益率の向上を図るだけなく、世の中の破壊的イノベーションやイノベーションによって起こされる変化への備えとしても重要になってくる。