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デジタルテクノロジーが変える社会【第1回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2017年9月18日

すべての始まりはインターネットの出現

 デジタルトランスフォーメーションを実行するには、テクノロジーの動向やテクノロジー自体に対する理解が不可欠である。トップ5社の成功が示すように、インターネットの出現以降、新しいイノベーションの出現やイノベーションのスピードが急加速した。その背景を振り返ってみたい。

 “つなげる”技術としてインターネットは誕生し、そこから変革がスタートした。インターネットは“つなげる”ための技術として開発され、標準化された手順によって個々のネットワーク同士や、それに接続されるコンピューターやユーザーをつないできた。インターネットによって世界中がつながり、Webとブラウザーによって世界中の情報に我々は簡単にアクセスできるようになった。Webの時代の始まりである。

 アクセスできる情報が増えると、必要な情報を見つける検索エンジンが必要になってくる。それを提供する会社として成長した代表例がGoogleだ。様々な情報がネット上に現れ、価値のある情報と人を結びつけることによって新たなビジネスが生まれた。ECはその1つで、Amazonが本のネット販売を開始した。

 インターネットユーザーが、さらに増えることによって、ユーザーとユーザー、すなわち人と人とをつなぐことで価値を実現するソーシャルな時代が始まる。それを代表する企業がFacebookである。

 つながる価値や重要性が高まるにつれ、どこでもつながる要求が高まり、モバイルネットワークとモバイルデバイスによるモバイルの時代が広まった。モバイルの時代をリードしたのがAppleである。スマホやタブレットをユーザー価値から再定義した。“つながる”改革はビジネスにも広がり、人とモノ、モノとモノがつながるIoT(Internet of Things:モノのインターネット)の時代を迎えることになる(図1)。

図1:デジタルテクノロジーによるイノベーションの流れ

“つなぐ”改革に“使う”改革が加わった

 一方、インターネットやPCを使って情報やサービスが提供されることで、企業は自社でネットワークやデバイスを準備することなく、既にある環境を利用する“使う”変革が始まった。スマホやモバイルネットワークによって大きく広がり、さらにクラウドが出現したことで、サーバーやストレージ、アプリケーションも“使う”モデルが可能になった。

 インターネットに、必要な時に必要なだけコンピューター資源が使え、使った分だけチャージされるクラウドが加わることで、ビジネスの自由度やスピードは格段と上がる。さらに様々な企業やベンチャーが新サービスやビジネス変革に乗り出した。UberやAirbnb、あるいはスマホゲームの「Pokémon GO」が大規模にグローバル成長を実現できたのも“使う”ことが大きな要因になっている。

 さらに、インターネットとクラウドによって大量データの収集や蓄積が可能になった。データを解析し、それらの関連や因果法則を求めビジネスに活用するビッグデータの時代の幕開けだ。それは、さらに機械学習(ML:Machine Learning)やディープラーニング(DL:Deep Learning)によるAIの時代へと進んでいく。

 “つながる変革”“使う変革”は今後も、分野やレイヤーを越えて継続していくだろう。新しいテクノロジーを理解する基礎としても、またその活用や新しいビジネスを考えるうえでも頭に入れておくべきである。

 次回以降、本連載のテーマである、デジタルテクノロジーによるイノベーションの最新動向や事例、進化するデジタルテクノロジーの本質と活用のヒントを取り上げていく。

大和敏彦(やまと・としひこ)

 ITi(アイティアイ)代表取締役。慶應義塾大学工学部管理工学科卒後、日本NCRではメインフレームのオペレーティングシステム開発を、日本IBMではPCとノートPC「Thinkpad」の開発および戦略コンサルタントをそれぞれ担当。シスコシステムズ入社後は、CTOとしてエンジニアリング組織を立ち上げ、日本でのインターネットビデオやIP電話、新幹線等の列車内インターネットの立ち上げを牽引し、日本の代表的な企業とのアライアンスおよび共同開発を推進した。

 その後、ブロードバンドタワー社長として、データセンタービジネスを、ZTEジャパン副社長としてモバイルビジネスを経験。2013年4月から現職。大手製造業に対し事業戦略や新規事業戦略策定に関するコンサルティングを、ベンチャー企業や外国企業に対してはビジネス展開支援を提供している。日本ネットワークセキュリティ協会副会長、VoIP推進協議会会長代理、総務省や経済産業省の各種委員会委員、ASPIC常務理事を歴任。現在、日本クラウドセキュリティアライアンス副会長。