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デジタルテクノロジーが変える社会【第1回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2017年9月18日

「デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)」は、スウェーデンのウメオ大学教授であるエリック・ストルターマン氏が2004年に提唱した概念である。その主張は、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」というものだ。現在、急速に進展したデジタルテクノロジーによって、企業のビジネスや社会サービスが大きく変貌し始めている。今回は、デジタルトランスフォーメーションを目指す際に不可避なテクノロジーの見方について触れてみたい。

 企業においてデジタルトランスフォーメーションが意味するところは、デジタルによる新ビジネス開発や、アナログとデジタルの融合による生産性の向上、コスト削減やスピード向上による既存ビジネスの変革、さらには、これらを実現するための企業組織の変革である。

 デジタルによる社会やビジネス変革は今日、ニュースや身の回りの出来事として毎日のように触れられるようになった。まずはデジタルによって変貌したビジネスを(1)デジタル企業がリードする世界、(2)スマホの浸透が変えるビジネス、(3)ネットとリアルの融合の3つの切り口から見てみたい。

(1)デジタル企業がリードする世界

 企業の大きさを示す指標として株価時価総額がある。

 株価時価総額=株の時価 × 総株数

 株価には現状だけでなく将来の期待が含まれるため、時価総額が大きいということは、現在のビジネスと将来の成長が期待されているということを意味する。図1が2017年8月2日時点の株価時価総額の世界トップ5である。すなわち、Apple、Google、Microsoft、Facebook、Amazon.comの米国IT企業だ。

表1:株価時価総額の世界のトップ5(2017年8月2日時点)
順位会社名株価時価総額(億ドル)
Apple8193
Alphabet(Google)6498
Microsoft5570
Facebook4907
Amazon.com4760

 これらIT業界のトップ5が今、世界中の上場企業すべての中でトップ5を独占している。米GE(General Electric)に代表される巨大製造業の時代から、米エクソンモービルに代表されるようなエネルギーの時代を経て、デジタルテクノロジーの時代へと移り変わったことを象徴する出来事だ。日本を代表するトヨタ自動車の時価総額が20.4兆円(2017年8月3日時点)に対しトップのAppleのそれは約89兆円と、その強大さが分かる。

 Appleを筆頭とするこれら企業は、デジタルなカルチャーを持ち、ビジネススピードの速さでも知られる。創業期を見ても、Googleは1988年、Amazonは1994年、Facebookは2004年だから、その急成長ぶりが分かる。ビジネスドメインの選択と集中の度合いも違う。Facebook は約98%が、Googleは約88%がデジタルテクノロジーを使ったサービスによる広告収入である。デジタルテクノロジーによるビジネスや、デジタル企業のカルチャーやスピードが世界を牽引しているのだ。

(2)スマホの浸透が変えるビジネス

 デバイスやネットワーク環境も大きく変わっている。世界のスマートフォンの出荷台数は2016年に13億6000万台。メーカー別シェアは、韓国Samsungが22.8%、Appleが15.3%、中国Huaweiが9.6%である(台湾TrendForce調べ)。大量に出荷されたスマホは、それ自身とモバイルネットワークに影響を与えている。同時に、スマホ用の部品や、そこで動作するアプリケーションを加えた関連ビジネスは、その動向が経済に大きな影響を与える存在になっている。

 スマホは、日常生活で、いつでも、どこでも使えるデバイスとして、生活やビジネスになくてはならないものになっている。MMD研究所の調査では、日本でのスマホの所有率は2015年に60%を越えた。調査対象者の約半数が1日に3時間以上スマホを使用しているという結果が出ている。

 スマホと、それをつなげるモバイルネットワークによって、ユーザーとしては、どこででも簡単にデジタル経験が可能である。一方、事業者側もサービスやコンテンツをスマホのアプリの形で提供することで、自社でデバイスやインフラを負担する必要がなくなっている。