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IoTやAIの最新サービスを支えるクラウドの進化と価値【第4回】
「Amazon Echo」や「Google Hone」などAI(人工知能)スピーカーが話題になっている。これらAIスピーカーを含め、各種のAI関連サービスを支えているのがクラウドである。クラウドは常に進化を続けており、仕事や生活、社会のインフラとしての重要性が増している。今回は、インフラとしてのクラウドの価値と進化を考えてみたい。
第1回で、クラウドの進化によって各種テクノロジーを“使う”という改革が進んだという話をした。必要なときに、必要な機能をクラウドのサービスとして使う「クラウドファースト」。さらにクラウドを仕事の中心にある基盤として考える「クラウドネイティブ」の時代の訪れである。
成長を続けるクラウド、SaaS/PaaSの成長率が高い
誰もが共通に利用できるパブリッククラウドのサービスは、各種のコンピューターやソフトウェア/アプリケーションといったリソース(資源)をサービスの形で使うものである。IaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Service)といった呼び方がある。
IaaSは、コンピューティング、ストレージ、ネットワークなどのコンピューター資源をサービスとして提供するものだ。PaaSは、アプリケーションの開発基盤やアプリケーションが使用する機能を、 SaaSは、ソフトウェアやアプリケーションの機能を提供する。利用者は、必要な機能だけを必要な時に使え、使った分だけの対価を支払えばよく、テクノロジーを使って実現したいことのスピードの向上とコストの削減を図れる。
クラウド市場は成長を続けている。米調査会社IDCによれば、世界のパブリッククラウドサービス市場の売上高合計は2017年上期に、前年同期比で28.6%増の632億ドルに達した。特にSaaSセグメントは、パブリッククラウド市場シェアの69%近くを占め、成長率は22.9%だった。IaaSセグメントは シェア17.8%、成長率38.1%。PaaSセグメントは、シェア13.6%、成長率50.2%である。
PaaSの成長率が最も高いのは、アプリケーション開発における迅速化の要求や、コンテナテクノロジーなどのポータビリティ(可搬性)の実現に伴い、その利用が加速されているからだ。SaaSとして、ソフトウェアやアプリケーションのサービス化から始まったクラウドが、オンプレミ(On Premise)から拡張性や弾力性を備えたIaaSへ移行し、そこからクラウドネイティブなアプリケーション開発のためのPaaSの活用へと、その活用が進んでいることがわかる。
パブリッククラウドの5つの価値
改めてクラウドの価値を考えてみたい。たとえば米IBMは、クラウドの価値として図1にある5つを挙げている。これらのメリットを以下では、パブリッククラウドを題材にみてみよう。
メリット1:IT運用コストのさらなるコスト削減
仮想化によりサーバーやストレージは統合されコストが削減されている。その環境が、必要な時に、必要なだけ利用できるサービスとして提供され、かつ使った分だけ対価を支払うクラウドサービスでは、必要外の費用の支出を抑えられる。クラウドの拡張性や弾力性を利用すれば、ピーク時を想定したリソースの準備も不要になる。
メリット2:ビジネススピードの向上
ビジネスの開発や変化に対応して、アプリケーションや開発環境、インフラなど、必要な機能をすぐに使える。
メリット3:資産の変動費化と利益の最大化
固定費となるハードウェアやソフトウェア、機器を稼働させるための施設、それらの準備や運用のための人件費が削減でき、使用量に応じた変動費としてサービス利用料を支払えばよい。
メリット4:ITガバナンスとセキュリティの強化
標準化されたクラウドサービスを活用することで、標準化やITガバナンスの強化を図るきっかけにできる。セキュリティに関しては、クラウド事業者が実現している強固なセキュリティ対策や、提供しているセキュリティや運用のためのツールを使用できるため、利用者はアプリケーションやコンテンツのセキュリティに集中できる。
メリット5:新規の顧客獲得と業際ビジネスの創造
必要な機能をサービスとして使うことでビジネスを迅速に立ち上げられる。スケーラビリティ機能により、ユーザー数や処理量の急激な増大にも対応できる。そのため米Uber Technologiesや米Airbnbのようなサービス事業者にとってクラウドはなくてはならない基盤になっている。クラウド活用によってシステム間連携が容易になり、業際ビジネスの創造も進む。
このように、パブリッククラウドの活用は、コスト削減とビジネススピード向上を目的に進んできたのである。