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戦略的活用が進むSaaS、利用企業が提供者になるチャンスも【第5回】
コラボレーション系でもMS、AWS、Googleの大手が競う
では海外では実際にどんなSaaSが人気なのだろうか。ベンダー別にみると、米Microsoftがリードし、それを米Salesforce.com、米Oracle、米Adobe、独SAPが追っている(Synergy Research Group調べ)。また米Business Week誌が選定する『Top25 Most Popular SaaS、Cloud Apps for Business 2017』におけるトップ10は、表2の通りである。
順位 | 前年順位 | サービス名 | 対象分野 |
1位 | 1位 | Microsoft Office 365 | コラボレーション系 |
2位 | 2位 | Salesforce.com | ERP系 |
3位 | 3位 | Box | コラボレーション系 |
4位 | 5位 | AWS(Amazon Web Services) | コラボレーション系 |
5位 | 4位 | Google G Suite | コラボレーション系 |
6位 | 6位 | Concur | HR/HCM系 |
7位 | 16位 | JiRA Atlassian | コラボレーション系 |
8位 | 12位 | Slack | コラボレーション系 |
9位 | 7位 | Zendesk | CRM系 |
10位 | - | ADP | HR/HCM系 |
表2をみると、コラボレーション系が6つもトップ10入りしている。3位のBOXは、様々なアプリケーションからアクセスできるシンプルでセキュアなファイル共有の仕組みだ。7位のJiRA Atlassianは、アジャイルチームのためのプロジェクト管理ツールで、アジャイル開発の必要性から需要が高まっている。
12位から8位に順位を上げたSlackは、2013年8月にリリースされたコミュニケーションツール。シンプルで容易に使えるUI(User Interface)や、カスタマイズ性、API(Application Programming Interface)やApplication Directoryを使った外部連携が容易といった特徴を持つ。リリース後は毎週7%の成長を続け、わずか2年半で利用者数は200万を突破している。
大手の上位進出も目につく。1位のMS Office365、4位のAWS(Amazon Web Services)、5位のGoogle G Suiteだ。日本では余り馴染みがないが、AWSは仮想デスクトップサービスの「WorkSpaces」や文書共有サービスの「WorkDocs」、Eメールおよびカレンダーの「WorkMail」というコラボレーションサービスを提供している。MS、Amazon、Googleはいずれも、IaaS(Infurastructure as a Service)から、PaaS、SaaSまでクラウドサービスを強化していることがわかる。
6位のConcurは、経費精算と管理、出張手配と管理、請求書管理に特化したアプリケーション。9位のZendeskは、カスタマーサービスやヘルプデスクを支援するツールだ。10位のADPは、ホステッド仮想デスクトップを人事や給与システムを含めた形で提供することで差異化を図っている。
業務ノウハウを加えた業種別展開が広がる
上記のように現在、利用されているSaaSは、コラボレーションや基幹系アプリケーションなど、汎用的なサービスが中心だ。そのSaaS市場では、次のような動きがある。
動向1:「Vertical SaaS」の広がり
どの企業でも汎用的に利用されるSaaSは「Horizontal SaaS」と呼ばれる。これに対し、ヘルスケアや、金融、医療、製造など特定の業界の特定業務に特化したSaaS、すなわち「Vertical SaaS」が広がってきている。
Vertical SaaSは、特定分野の顧客をターゲットにしているため、(1)顧客獲得コストが低い、(2)機能や内容などに焦点を当てた優良なサービスを構築できる可能性が高い、(3)顧客離れが起きにくい、という特徴がある。今後、様々な分野で独自のノウハウをSaaS化していく動きが増えてくるだろう。
動向2:SaaSのエコシステム化
データ連携やAPI連携 プラットフォーム化により、SaaSのエコシステムが構築され始めている。SaaSベンダーが自社のサービス同士を連携し、より広い分野のソリューションにしたり、他のSaaSベンダーと連携することでトータルソリューションを実現したりする動きである。
動向3:AIの活用
学習済みAIのSaaSとしての提供や、SaaS自身やSaaSを活用するためのインテリジェントアシスタントとしてのAI活用が進んでいる。さらに、SaaSによって収集されるデータや、既に持っているデータ、他のSaaSなどから入手できるデータを解析しインサイト(洞察)を導き出す際にAIを適用し、アプリケーションの高度化が図られている。