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- 大和敏彦のデジタル未来予測
IoTのデジタル変革における可能性と活用【第6回】
ベンダーの熾烈な競争が選択肢を増やす
プラットフォームやIoT要素を巡るベンダーの競争は熾烈さを増している。結果、利用者としての企業の選択肢は増えている。米The Channel Companyが発行するCRN誌の『10 IoT companies To Watch In 2017』は、重要なIoT関連企業として、米Intel、GE、米IFTTT、韓国Samsung社、米Amazon.com、Google、Cisco、アイルランドのDavra Networks、米IBM社、Microsoftを選んでいる。各社の動きからIoTソリューションの動向を見てみよう。
Intel:IoT戦略に基づき、インテリジェントゲートウェイや、組み込み型チップやセキュリティ機能、サービスによって、E2E(End to End)のソリューションを提供している。
GE:デジタル分野への挑戦としてIndustrial Internetを掲げて力を入れている。インダストリアル分野をターゲットとしたIoTプラットフォームである「Predix」はPaaSとして、資産管理、解析、データ、接続などの機能をインダストリーアプリケーションに提供する。
IFTTT:2010年にスタートした企業で、Webサービスやモバイルアプリケーション、ハードウェアデバイスを自動的に統合するサービスを提供している。開発者はIFTTTのAPI(Application Programming Interface)を使って、小さなプログラムを作成しアクションやトリガーを追加できる。
Samsung:「Smartthings Cloud」やネットワーク製品、IoTコンポーネントを内蔵した「Artik IoT モジュール」と呼ぶチップ、ウェアラブルデバイス等のデバイスと、オープンソフトウェア環境など幅広いソリューションを提供している。
Amazon:統合的なクラウドサービスであるAWS(Amazon Web Services)としてIaaS、PaaS、SaaS(Software as a Service)を提供。IoTに関しては「AWS IoTプラットフォーム」として必要なサービスを統合して提供している。
Google:その動きは多岐にわたり、IoTに特化した基本ソフト(OS)の「Brillo」のほか、Android of Things、Google Home、Google Nextなど幅広いソリューションを提供している。
Cisco:IoTに焦点を当てたプラットフォームである「Jasper」によるIoTネットワークファブリックや、IoTデータファブリックである「Cisco Kinetic」と呼ぶソリューションを提供している。AI分野ではIBMのWatsonと提携している。
Davra Networks:「RuBAN」と呼ぶクラウドベースのプラットフォームを提供し、展開からエンド顧客へのアプリケーション配布までのIoT 実装と制御、およびアプリケーションの開発機能やデータ連携機能を提供している。
IBM:「IBM Watson Platform」を提供し、「コグニティブIoT」と呼んで、IoTによるデータを使った高度なインテリジェンスを提供する。米AT&Tと提携している。
Microsoft:「Azure Suites」の中で、IoTに関するサービスを提供している。デバイス、クラウド、分析機能などのプラットフォームとソリューションを提供する。
このように、IoTのプラットフォームやIoT要素、さらに解析やAIなどIoTを実現するソリューションをさまざまな会社が提供し激しく競争している。そのなかから適切なソリューションを選んで使うことによって、迅速にセキュアなIoTシステムを実現できる。
継続的な進化のための体制も必要に
IoTは、さまざまな分野で変革を引き起こす技術である。これらをうまくビジネスにつなげるためには、センサー技術、画像技術、プラットフォームなどのテクノロジー動向と、その製品動向からテクノロジーの可能性を見極めること、さまざまな成功事例を参考に活用の可能性を知ることが重要だ。
そうした情報をベースに、IoTの活用戦略を立て、自社の狙いや期待効果にあったビジネスモデルを考えなければいけない。同時にプラットフォーム等の標準化を行い、自社のIoT活用技術として知識・経験を蓄積し、継続的に進化させていく体制を作ることも重要である。
大和敏彦(やまと・としひこ)
ITi(アイティアイ)代表取締役。慶應義塾大学工学部管理工学科卒後、日本NCRではメインフレームのオペレーティングシステム開発を、日本IBMではPCとノートPC「Thinkpad」の開発および戦略コンサルタントをそれぞれ担当。シスコシステムズ入社後は、CTOとしてエンジニアリング組織を立ち上げ、日本でのインターネットビデオやIP電話、新幹線等の列車内インターネットの立ち上げを牽引し、日本の代表的な企業とのアライアンスおよび共同開発を推進した。
その後、ブロードバンドタワー社長として、データセンタービジネスを、ZTEジャパン副社長としてモバイルビジネスを経験。2013年4月から現職。大手製造業に対し事業戦略や新規事業戦略策定に関するコンサルティングを、ベンチャー企業や外国企業に対してはビジネス展開支援を提供している。日本ネットワークセキュリティ協会副会長、VoIP推進協議会会長代理、総務省や経済産業省の各種委員会委員、ASPIC常務理事を歴任。現在、日本クラウドセキュリティアライアンス副会長。