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IoTのデジタル変革における可能性と活用【第6回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2018年2月19日

「自社の経営・事業に最も大きな影響を及ぼす技術」として日本の経営者が挙げるのは、AI(人工知能)とIoT(モノのインターネット)である(日本経済新聞が中国、韓国の有力紙と実施した『日中韓経営者アンケート』より)。他の技術を引き離し、それぞれ30%を越え1位と2位を占めた。AIについては、第3回『AIのデジタル変革における可能性と活用』で取り上げたので、今回はIoTの活用状況と活用に向けた考慮点を見てみたい。

 2018年1月に米ラスベガスで開催された「CES2018」では、自動車やホーム、ヘルスケア、娯楽など、さまざまな分野でIoT(Internet of Things:モノのインターネット)デバイスやIoTソリューションが発表された。そういった斬新な技術や製品分野もIoTの応用ではあるが、IoTはビジネス変革を起こし、経営・事業に大きな影響を及ぼす重要な技術である。

IoT投資のトップ3は製造、運輸、公共事業

 具体的には、IoTとして接続されたセンサーやカメラが、これまで収集できなかったデータの取得によって見える化を実現し、さらにデータを解析することによって、より深い知識を得ることが可能になる。その結果が、プロセスや仕組みの改革につながり、資産の有効活用や、生産性向上、コスト削減、ビジネスの迅速化、顧客価値の向上といった成果が期待できる。

 いろいろな活用事例が発表されているが、いくつかの統計から、大きな動きを俯瞰してみたい。米調査会社のIDCは「2020年にIoT関連市場が70億ドルに達する」と予測し、2017年1月に発表した『世界IoT関連市場の産業別投資額』では、製造、運輸、公共事業がIoT投資のトップ3になっている。

 製造分野では、ドイツの「Industry4.0」や米GEの「Industrial Internet」、中国の「製造2025」、日本の「Connected Industry」といった変革プロジェクトが走る。運輸分野では、自動運転による変革や物流革命が進んでおり、公共分野では「Society 5.0(超スマート社会)」のような変革が起ころうとしている。

 これらの変革の中でIoTの役割は大きく、IoTへの対応が今後の企業競争力を変えていく。製造を例に挙げれば、Industry4.0は、全体最適化と自動化によって生産コストや物流コストを低減し、生産性の向上とともに環境負荷の低減を狙う。そこでは、企業競争力の根幹が変わっていく。

企業競争力強化に向けたベンチャー買収が活発

 ベンチャー企業の動きも盛んである。米調査会社Venture Scannerが発表している成功しているIoTベンチャーの動向である『IoT Exit Activity by Category』によれば、成功(Exit)したベンチャー企業の分野別企業数のトップ10は表1に挙げる分野である。

表1:成功(Exit)したベンチャー企業数が多い上位10分野(『IoT Exit Activity by Category』、Venture Scannerより)
順位分野
1IoTソフトウェアプラットフォーム
2ホーム
3ヘルスケア
4IoTコンポーネント
5フィットネス
6インダストリアル
7IoTハードウェアプラットフォーム
8シティ & ビルディング
9自動車
10セキュリティ

 新分野の開発やテクノロジーで企業競争力を強化するために、オープンイノベーション(共創)戦略としてのベンチャー買収が続く。1位のソフトウェアプラットフォーム、2位のホーム、8位のシティ&ビルディング、9位の自動車、10位のセキュリティの各分野では、買収がIPO(株式公開)より、はるかに高い比率になっている。