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株価変動や仮想通貨に見るFintechがもたらす経営と社会へのインパクト【第7回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2018年3月19日

Fintechの“基盤”として注目集めるブロックチェーン

 上記のようなFintechには、インターネットやクラウド、AIといったテクノロジーが大きな役割を担っている。その中で注目を集めるのがブロックチェーンである。金融関連ニュースのポータルサイトFinancialBuzz.comによれば、ブロックチェーンの市場規模は、2016年に2億1610万ドル。今後は急成長を続け2024年には96億ドル に達すると予測されている。

 ブロックチェーンは「DLT(Digital Ledger Technology)」とも言われ、分散型の台帳管理の仕組みを提供する。その基本的な仕組みは、こうだ。まず取引の1件1件(トランザクション)が「ブロック」と呼ばれる台帳に書き込まれる。このブロックが一杯になると次のブロックに書き込んでいく。結果として台帳は、ブロックがつながった形、すなわちブロックチェーンになる。

 台帳を共有したい参加者は、P2P(Peer to Peer)ネットワークのメンバーになり、全員がブロックチェーンを持つ。そのため改ざんを防止でき、バックアップが不要になる。また各ブロックは、1つ前のブロックのハッシュ値を持つ。ハッシュ値は改ざんを防ぐための情報だ。ブロックの内容を改ざんするとハッシュ値が変わるため、次のブロックに格納されたハッシュ値と比較することで改ざんを発見できる。

 こうした仕組みと構造から分かるように、ブロックチェーンは取引記録をすべて改ざんができない台帳に書き込むことで、セキュアで安全な仕組みを提供する。ただし、コインチェック事件に見られるように、販売所や交換所など仮想通貨と現実通貨の接点では、ブロックチェーン以外のテクノロジーも利用されており、そこでは侵入やサイバー攻撃、なりすましなどへのセキュリティ対策が必要になる。

ビットコインとマイニングの仕組み

 ブロックチェーンの動きを、その代表的な応用例である仮想通貨の「ビットコイン(bitcoin)」の例で確認してみる。ビットコインでは、取引の記録である送信元や、送信先の情報、電子署名の暗号鍵、移動ビットコインの額などをブロックチェーンに書き込んでいる(図1)。

図1:「ビットコイン(bitcoin)」の仕組み

 実際の取引は、ブロックチェーンの台帳を持つ「ウォレット」によって行われる。各人が持つウォレットの中で、支払い可能かどうかが判断され、支払いが可能であれば、その支払いのトランザクションをP2Pネットワークへ発信する。これらのトランザクションは「プール」に貯められ、承認のプロセスを待つ。

 承認プロセスは「Proof of Work(PoW)」と呼ばれる。ビットコインでは「マイナー」と呼ばれる参加者が、プールに貯まったトランザクションを書き込むためのブロックを「マイニング」という作業によって見つけ出す。そのブロックは、「ハッシュ値が特定の条件を満たす」という条件に合致しなければならないため、膨大な計算が必要になる。

 マイニングは競争で、その特定値を最初に見つけ出したマイナーだけがブロックを追加する権利を持つ。最初に特定値を見つけ出したマイナーには、ビットコインで成功報酬が与えられる。成功報酬を求めるマイナーによってブロックは追加されていく。

 追加されたブロックに対し、プールに貯まっていたトランザクションが書き込まれる。同時に、そのブロックはP2Pネットワークで配布され、適正かどうかが参加者によって確認される。参加者が承認して初めて実際のトランザクションが実行される。

 ビットコインのPoWは、マイナーの参加をうながすインセンティブや、ブロックとしての特定値を見つけ出すのに10分程度かかる計算が必要になる仕組みになっている。仮想通貨以外の分野でブロックチェーンを応用するには、別の仕組みのPoWを選択する必要がある。