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中国アリババのFintechにみるデータの高度活用法【第8回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2018年4月16日

データに基づく成功のスパイラルを生み出す

 こうしたアリペイのサービス拡大には、ビッグデータ活用による“成功のスパイラル”が見られる(図2)。

図2:アリペイにみるビッグデータ活用による“成功のスパイラル”

 すなわち、モバイル決済のようなビジネスモデルから、核になるデータを収集できる仕組みを作り、そのデータから顧客価値を生み出すとともに消費をうながすことで、さらにデータを収集・蓄積する。さらにデータを補ったり統合したりすることで新しい価値を創造していく。それをプラットフォームとして展開することで他社にも利用してもらい、さらにデータを増やしながら、新しい顧客価値創造へとつなげている。

 これからのビジネス創造においては、アリペイのようにデータの価値の実現と増大、それらを活用した進化するビジネスモデルの構築を考えなければならない。

 一方で、信用情報や個人情報の利用に関しては最近、いろいろな議論や動きが起きている。Facebookにおける大量の個人情報の不正使用事件は、消費者情報が外部で流用されるリスクを改めて浮き彫りした。芝麻信用も、人権活動家からは大衆を監視し統制するシステムだと批判されている。芝麻信用は、購買履歴や個人情報といったデータを使わずに信用を判断しているが、信用スコアを上げるためには、それに見合った行動が求められるため、たとえそれが本人の意志による行動であったとしても、個人の信用情報の管理や監視につながるとの見方である。

 欧州では2018年5月に「GDPR(General Data Protection Rule)」の施行が予定される。メールアドレスやクレジットカード情報といた個人情報の持ち出しが原則禁止されるなどの規制強化が進む。米国では政府が企業の保有する個人情報に容易にアクセスできるようにする「CLOUD(Clarifying Lawful Overseas Use Data)法」が成立するなど、個人情報に関しての動きが盛んになっている。

 これらの動きの中では、個人情報の扱いに関しては、規制への対応と強固なセキュリティの実現が必要になる。

大和敏彦(やまと・としひこ)

 ITi(アイティアイ)代表取締役。慶應義塾大学工学部管理工学科卒後、日本NCRではメインフレームのオペレーティングシステム開発を、日本IBMではPCとノートPC「Thinkpad」の開発および戦略コンサルタントをそれぞれ担当。シスコシステムズ入社後は、CTOとしてエンジニアリング組織を立ち上げ、日本でのインターネットビデオやIP電話、新幹線等の列車内インターネットの立ち上げを牽引し、日本の代表的な企業とのアライアンスおよび共同開発を推進した。

 その後、ブロードバンドタワー社長として、データセンタービジネスを、ZTEジャパン副社長としてモバイルビジネスを経験。2013年4月から現職。大手製造業に対し事業戦略や新規事業戦略策定に関するコンサルティングを、ベンチャー企業や外国企業に対してはビジネス展開支援を提供している。日本ネットワークセキュリティ協会副会長、VoIP推進協議会会長代理、総務省や経済産業省の各種委員会委員、ASPIC常務理事を歴任。現在、日本クラウドセキュリティアライアンス副会長。