• Column
  • 大和敏彦のデジタル未来予測

AIによって変わる企業競争、先行する米国に中国が肉薄【第11回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2018年7月16日

Amazon、Google、Microsoftが競うAI最前線

 では、Amazon、Google、Microsoftのトップ3のAIに関する最新動向を見てみたい。

AmazonのAI動向

 Amazonの開発投資には、クラウドの「AWS(Amazon Web Services)」、AI、音声アシスタントの「Alexa」、コンピュータービジョンが含まれている。Amazonは、これらの投資によって開発されたテクノロジーとその応用技術をサービスとして提供し、自社でも活用している。表1にAIに関する成果の一例を挙げる。

表1:AmazonのAIに関する成果の例
名称機能
A9Amazon内の検索エンジン
Amazon LEX会話型インターフェイス
Amazon MXNet機械学習応用の構築、トレーニングや展開のプラットフォーム
Amazon PollyAIを使ったテキスト読み上げサービス
Amazon RekognitionAIに基づく画像認識、画像解析

 これらのサービス展開とともに、社内の仕組みやビジネスイノベーションにも進んで採り入れている。2012年に買収したKIVA Systemのロボットを導入した物流センターにおけるインテリジェントな棚の移動や、コンピュータービジョンを使ったキャッシャーレスの店舗「Amazon Go」がよく知られている。

 他にも、「Amazonマーケットプレイス」と呼ぶ、Amazon以外の売り手が商品を売るオンラインショッピングモールでは、マーケットプレイスとAmazonの扱う商品をリンクし、それを表示する作業をAIで判断し自動化を図るなど、広い分野で活用を進めている。

GoogleのAI動向

 囲碁ソフト「AlphaGO」でAIの大きな可能性を証明したGoogleのDeepMindは、強化学習や教師なし学習といった応用技術を開発することによって進化させ他分野への適用を広げている。データセンターの空調分野では、電力消費を40%削減するという成果を上げている。

 ほかにも、Googleのサービスである「検索」や「Google Assistant」、より人に近い音声を合成する「Wavenet」「Google翻訳」、メールや写真の分類など多くの社内の業務やサービスに、機械学習やその応用である画像認機、音声技術などのAIを活用している。

 AIテクノロジー自身も、Google Cloud上でカスタム機械学習モデル 「TensorFlow」を提供するとともに、「転移学習」と呼ばれる関連する問題のデータや学習結果を利用した教師データを基に少数データで活用できるトレーニング済みML(Machine Learning)モデルを提供している。

 その中には、「Vision(画像認識)」「Speech(音声処理)」「 Translation(翻訳)」のAPI(Application Program Interface)がある。これらのサービスによって、画像認識、音声処理、翻訳の各分野でAIを活用できる。 ヘルスケア分野にも注力し、糖尿病、パーキンソン病、心臓病などの診断精度向上と、スピードアップを目指してAIを応用している。またそれら実現のためのプラットフォームの構築を進めている。

MicrosoftのAI動向

 Microsoftは、8000人を越えるAI人材を「AI&リサーチグループ」として集める。「デジタル・インテリジェント・アシスタント」を中心としたAIテクノロジー開発のほか、AIで社会課題を解決する「AI for Good」と呼ぶ新しいアイデアに基づく研究活動を進めている。

 その中には、「AI for Earth」「Healthcare NExT」「Inclusive Experience」といったテーマがある。AI for Earthは、データに基づいた収穫増の実現や伝染病の早期発見によって低コストの精密農業を目指す。Healthcare NExTでは、MRIやCT画像から体内を3次元CGで表示し、診断や手術に活用し、チャットボットで患者に対応する。Inclusive Experienceは、写真の風景を音声で読み上げるようなアクセシビリティの実現を目指す。