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プラットフォームとして活用が進むブロックチェーン【第14回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2018年10月15日

分野2:履歴記録とその活用

 改ざんのない分散台帳であるブロックチェーンに履歴を記録し、トレーサビリティを実現することで、内容の証明や問題発生時の問題解決に利用する。

 米国では、ウォールマート、クローガーなどのスーパーマーケットと食品会社、IBMが協業し、作物が生産から加工、輸送、販売を経て消費者に渡るまでの情報をブロックチェーンに記録し追跡できるようにしようとしている。米国では食品を原因とする病気が年間4800万人におよぶ。ブロックチェーンを使う仕組みにより、信用保証と、病気が発生した際の原因発見を迅速化することを目指す。

 サプライチェーンにおけるトレースにも効果を発揮する。インド政府のシンクタンクと印Apollo Hospitals Groupは、米Oracleと提携し、医薬品のサプライチェーン管理への応用を進めている。製造者から患者へのトレースを可能にし、偽造医薬品が広がるのを防ぐ。

 中国AletheiaとUMVA-Chinaは、自動車製造におけるサプライチェーンでのトレースを可能にするブロックチェーンアライアンスを発表している。ダイヤモンドの流通状況を追跡できるようにしようとしているのは、英Everledgerだ。独SAPと提携し、紛争ダイヤの流通阻止を狙っている。

 情報へのアクセスやアップデートの履歴記録にも使える。エストニアでは医療データの管理にブロックチェーンを利用している。ブロックチェーンのブロックに、入力、閲覧、アクセス権限の付与などの情報を書き込むことによって、電子カルテへの不正アクセスを防ぐ。患者の意思に沿う形で情報へのアクセスや共有が行われていることをシステム上で保証する。

分野3:共有情報管理

 「DLT(Distributed Ledger Technology:分散台帳技術)」あるいは信頼できるデータベースとして、ローンやクレジットの記録、公的なデジタル身分証明やオンライン選挙などに広く応用されている。

 大和証券は、運用会社や信託銀行などと共同で、株式の売買数量や価格を格納し、売り手と買い手で間違いがないかを確認する作業で使おうとしている。

 大規模な決済への応用例も出てきている。三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)は米アカマイテクノロジーと協業し、ブロックチェーンを使った新決済プラットフォームを開発したと発表している。決済を2秒以下で処理でき、毎秒100万件超の取引を処理できるとする。

分野4:スマートコントラクト アプリケーション

 スマートコントラクトでは、契約をプログラム化し、それをブロックチェーン上に格納する。そのプログラムによって条件の確認や実行を自動化でき、参加者同士が直接取引できる分散アプリケーションを構築できる。

 保険契約での応用では、合意した契約内容をスマートコントラクト上に書き込み、保険請求時には、プログラム化された契約条件に基づき、自動的に支払いを実行する。自動化によるコスト削減だけでなく、プロセス自体を請求者にオープンにできる。

 コピーライトの保護にも使われている。権利や所有権の情報と使用条件をスマートコントラクトとしてブロックチェーンに書き込むことで、その条件に従った使用権の提供が可能になる。

 この分野ではすでに成功したスタートアップ企業も出てきている。米Mediachainだ。ブロックチェーン上で楽曲と、その権利者の情報を結びつけ、情報のアップデート機能や、それに基づいた使用料の支払いの仕組みを作り上げた。2017年、音楽ストリーミング大手のSportifyによって買収された。