• Column
  • 大和敏彦のデジタル未来予測

プラットフォームとして活用が進むブロックチェーン【第14回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2018年10月15日

オープンソース化やクラウドサービス化が進む

 ブロックチェーンの応用が、上記のように広がっている背景には、環境やツールの貢献がある。ブロックチェーンプラットフォームのOSS(オープンソースソフトウェア)化に向けては2016年2月、Linux Foundationが中心になって「Hyperledgerプロジェクト」が設立されている。同プロジェクトの成果として活用環境やツールが発表されている。

 「Hyperledger FABLIC」がその一例で、モジュラー構造を持つアプリケーションやソリューションの基盤としてブロックチェーンが実装されている。許可制メンバーシップ、データの保護や検索機能など、ビジネス応用に必要な機能の実装と、パフォーマンスやスケーラビリティに対応している。

 ほかにも、日本企業であるソラミツは、より簡単で容易に活用できる基盤として「Hyperledger IROHA」を提供している。スマートコントラクトの機能も「Hyperledger Burrow」として発表している。

 クラウド上でのブロックチェーンの開発・実行環境の提供も始まっている。IBMは2017年、企業向けにクラウド上でのHyperledger FABLICを基盤としたサービスをリリースした。米Microsoftも「Azure Blockchain Workbench」を発表。2018年5月にはAWS(Amazon Web Service)も「Kaleido Blockchain Business Cloud」と呼ぶ、Etheriumをベースとするサービスを発表した。許可制と許可なしのパブリックな両方の実装ができ、スマートコントラクトにも対応している。

分散環境であるIoTとの整合性も高い

 金融機関向けのブロックチェーンプラットフォーム「Corda」を開発した米R3CEVのように、ツールや環境を提供するベンチャーの動きも盛んだ。分散処理なので、稼働環境としてもクラウドだけでなく、デバイスの選択も可能である。すでにブロックチェーン機能を持つスマートフォンやデバイスが発表されており、さまざまな形での実装が考えられている。

 ブロックチェーンは、情報の改ざん防止機能を持つセキュアな共有分散データベースであり、P2Pネットワークを使ったトランザクション処理が実現できるプラットフォームである。その上に実装されるスマートコントラクトによって、契約や取り決めの自動実行も可能にする。

 今回紹介した各種の応用例にみられるように、ブロックチェーンの特徴を生かせる分野では、クラウド上で開発するより、はるかに迅速にビジネスを立ち上げられる。さらにIoT(Internet of Things:モノのインターネット)のような分散環境とも整合性がある。今後もプラットフォームとしての活用は広がっていくであろう。

大和敏彦(やまと・としひこ)

 ITi(アイティアイ)代表取締役。慶應義塾大学工学部管理工学科卒後、日本NCRではメインフレームのオペレーティングシステム開発を、日本IBMではPCとノートPC「Thinkpad」の開発および戦略コンサルタントをそれぞれ担当。シスコシステムズ入社後は、CTOとしてエンジニアリング組織を立ち上げ、日本でのインターネットビデオやIP電話、新幹線等の列車内インターネットの立ち上げを牽引し、日本の代表的な企業とのアライアンスおよび共同開発を推進した。

 その後、ブロードバンドタワー社長として、データセンタービジネスを、ZTEジャパン副社長としてモバイルビジネスを経験。2013年4月から現職。大手製造業に対し事業戦略や新規事業戦略策定に関するコンサルティングを、ベンチャー企業や外国企業に対してはビジネス展開支援を提供している。日本ネットワークセキュリティ協会副会長、VoIP推進協議会会長代理、総務省や経済産業省の各種委員会委員、ASPIC常務理事を歴任。現在、日本クラウドセキュリティアライアンス副会長。