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プラットフォームとして活用が進むブロックチェーン【第14回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2018年10月15日

前回、デジタルトランスフォーメーション(DX)の産業界へのインパクトについて紹介した。その中で、古いインフラや業務システムが、イノベーションを実現する際の阻害要因になる可能性があることを述べた。現在、その対極にある最新のインフラとして広がりつつあるのが、分散型のプラットフォームであるブロックチェーンだ。今回は、ブロックチェーンの最新動向と、そのインパクトについて考えてみたい。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)のプラットフォームとしては、新しいビジネスを迅速に実現し、柔軟に運用できる必要がある。その選択肢として現在、選ばれているのがクラウドだ。シンガポールの市場調査会社Canalysの調査によれば、2018年第2四半期のクラウドインフラ市場は200億ドル規模に達し、前年比で47%増加している。

分散型プラットフォームのブロックチェーンが広がり始めた

 一方、新たなプラットフォームとして広がりつつあるのが、分散型のブロックチェーンである。米JPモルガン・チェースが「IIN(InterBank Information Network)」と名付けたグローバルな銀行間送金ネットワークの構築にブロックチェーン技術を活用するなど、世界中でその活用が進んでいる。

 第7回『株価変動や仮想通貨に見るFintechがもたらす経営と社会へのインパクト』で述べたようにブロックチェーンは、暗号化技術により情報を「ブロック」に書き込み、そのブロックのハッシュ値によって、ブロックのつながりと情報の正当性を保証する。情報の履歴を残せ、かつ改ざんを防げる。

 ブロックチェーン上の情報は、P2P(peer-to-peer:1対1)ネットワークにより分散共有される。P2Pネットワークでは参加している「ノード(コンピューター)」がすべて同等の立場にあり、すべてのノードが処理の負荷を分担する。

 このような仕組みにより、ブロックチェーンは、中央集中や階層的な制御なしに、B2B(Business to Business:企業間)やB2C(Business to Consumer:企業対個人)のトランザクションを処理するプラットフォームを実現できる。参加者が対等な立場で参加でき、管理と責任を共有できることも大きな特徴である。

 プラットフォームとしてみれば、膨大なコンピュータ資源を必要とせず、バックアップやデータのセキュリティ対策を削減でき、構築期間と開発・運用コスト、スケーラビリティや障害に対する対応力で優位性を持つ。

4つのブロックチェーン活用分野で実装が進む

 ブロックチェーンの活用事例も多数、登場してきている。それらは、図1のように4つに分類できる。

図1:ブロックチェーンを使ったプラットフォームの活用分野

分野1:トークン化とその処理

 資産やサービスなどの価値と、デジタルトークンの交換を「トークナイゼーション」と呼び、その活用が広がっている。ブロックチェーンは、デジタルトークンの改ざんを防ぎ、参加者によって合意された信用できる取り扱いの仕組みを実現するために使われる。

 その代表例が仮想通貨(暗号通貨)だ。さまざまな仮想通貨が現れている。そもそもブロックチェーンは仮想通貨「BITCOIN」を支えるプラットフォームとして登場した。仮想通貨をトークン化し、ブロックチェーンに記録することで、保管や流通を迅速かつ容易にできる。冒頭に挙げたJPモルガン・チェースの銀行間送金も、この例である。

 株や債券のトークン化も進む。「ICO(Initial Coin Offering)」が、代表的な活用例である。ICOでは、仮想通貨やトークンを提供することで資金を調達する。ICOの功罪に関する議論も活発だが、資金調達額は増えている。ICOを格付けしているICOratingによれば2017年の調達額は61憶8000万ドルに達している。

 交換や保管が難しいものをトークン化によって解決する動きもある。米L03 Energyの電力取引プラットフォームが一例だ。ブロックチェーンを使い、ニューヨーク州ブルックリンで太陽陽光発電設備を持つ家庭が、地域内で自由に電力を取引できるようにする実証を進めている。発電量をトークンにすることによって保管や移動を可能にする。

 分散発電におけるトークン化は世界中で広がっている。日本では、みんな電力が同等の使い方をしようとしている。