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デジタルネイティブ企業になるためのテクノロジー活用を【第18回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2019年2月18日

実用性やマネタイズ、時間軸の検討が不可欠

 テクノロジーを活用する目的は、サービスや自社のプロセス/仕組みを変えたり、新ビジネスを開発したりという「変革」である。そのためにはテクノロジーの動向やユースケースの把握と、それが自社にもたらすインパクトと活用可能性を継続的に検討しなければならない。

実際の活用に向けては、以下の視点からの検討が必要である。

・テクノロジーの実用性
・ビジネスモデル(マネタイズ)
・実現スピード

 テクノロジーが実験で使えることと、実際のビジネスとして定常的に運用していけることには大きな差がある。実際にビジネスに使っていくためには、多くの場合、テクノロジーを組み合わせたシステムとして運用する。システムとしての品質や定常的な性能、障害への対処などを考える必要がある。同時にセキュリティの観点で、脆弱性やリスクを考え、それを低減することも検討しなければならない。

 テクノロジーが画期的でも、それを使ったマネタイズの検討が重要である。ゴールを明確にし、どの顧客に何を、どのように提供して儲けるかのビジネスモデルを考える必要がある。差別化要因の明確化、競合の動きの把握も必要だ。

 そのようにして考えたモデルが、ビジネス的に成り立つかを検討しなければならない。社内改革の場合は、ゴールがビジネスや会社の戦略との整合性があるか、効果をどう見ていくかを考える必要がある。

 時間も大事だ。開発に長い期間かかれば、市場や顧客価値も変わる。最小限の機能を使い始め、追加・変更していくような実装も選択肢になる。

 AIやIoT、5Gなどデジタルテクノロジーの進化によって、これまでできなかったことができるようになる。これらを効果的に取り入れて積極的に活用する企業こそが、デジタルネイティブ企業として成長を続けられる。そのためにはテクノロジー自身やユースケースの動向把握、市場や顧客価値の動向把握を基に、変化を先取りして進化していかなければならない。

大和敏彦(やまと・としひこ)

 ITi(アイティアイ)代表取締役。慶應義塾大学工学部管理工学科卒後、日本NCRではメインフレームのオペレーティングシステム開発を、日本IBMではPCとノートPC「Thinkpad」の開発および戦略コンサルタントをそれぞれ担当。シスコシステムズ入社後は、CTOとしてエンジニアリング組織を立ち上げ、日本でのインターネットビデオやIP電話、新幹線等の列車内インターネットの立ち上げを牽引し、日本の代表的な企業とのアライアンスおよび共同開発を推進した。

 その後、ブロードバンドタワー社長として、データセンタービジネスを、ZTEジャパン副社長としてモバイルビジネスを経験。2013年4月から現職。大手製造業に対し事業戦略や新規事業戦略策定に関するコンサルティングを、ベンチャー企業や外国企業に対してはビジネス展開支援を提供している。日本ネットワークセキュリティ協会副会長、VoIP推進協議会会長代理、総務省や経済産業省の各種委員会委員、ASPIC常務理事を歴任。現在、日本クラウドセキュリティアライアンス副会長。