• Column
  • 大和敏彦のデジタル未来予測

デジタルネイティブ企業になるためのテクノロジー活用を【第18回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2019年2月18日

デジタルトランスフォーメーション(DX)を実践するには、進化し続ける先端テクノロジーの活用を検討することも重要な活動になる。それらのテクノロジーが生活や仕事に、どのような価値を提供するのか、その価値をどう自社のイノベーションにつなげるかを考えなければならない。今回はデジタルテクノロジー(デジタルテクノロジー)と、その活用について考えてみたい。

 前回の『『DXレポート』が指摘する「2025年の崖」を越える攻めのクラウド活用』では、インフラとしてのシステム要件について考えた。それらのインフラをベースに、デジタルテクノロジーを活用し、新しい製品/サービスやビジネスモデルを実現することが、企業の成長や競争力の強化につながる。

 米ラスベガスで2019年1月に開催された「CES 2019」では、前回の自動運転とAI(人工知能)スピーカーに代わり、5G(次世代無線通信)が脚光を浴びた。加えて、AIやロボット、自動車関連(コネクティッドカー、自動運転)、画像技術(折りたためる有機EL画面、4K/8K)、AR(拡張現実)/VR(仮想現実).ドローン、空飛ぶクルマなど、幅広い先端テクノロジーと、その応用が発表されたのも特徴だ。

 こうした時代にあっては、デジタルテクノロジーを活用し新ビジネスの開発やビジネスそのものの変革に取り組んだり、製品/サービスの価値の中核として先端テクノロジーを使ったりといった変革を続けることが、持続可能な成長企業としては不可欠になる。

デジタルネイティブ企業が新しい企業プラットフォームを求める

 デジタルテクノロジーの動向を把握し、それをベースにビジネスを考え、積極的にデジタルテクノロジーを利用している企業を「デジタルネイティブ企業(DNE:Digital Native Enterprise)」と呼ぶ。そのDNEには、デジタルテクノロジーの動向を先読みし、応用を考え、イノベーションにつなげるカルチャーの変革や仕組みの実現が必要だ。

 米調査会社のIDCの予想によれば、「2022年までに、世界のGDPの60%を越える部分が、デジタル化によって後押しされた製品やサービス、オペレーション、協業関係による成長によってもたらされる。そのため2023年までに、90%の企業がデジタルネイティブなIT環境を構築する」

 IDCは、デジタルネイティブ企業になるためのインフラテクノロジーとして、クラウド、モバイル、ビッグデータ解析、ソーシャルメディアを挙げ、これらを総称して「第3世代のプラットフォーム」と呼ぶ。「2023年までに企業は、第3世代のプラットフォームに、IT費用の75%を支出するようになる」と予測する。個々の現状と動向を見てみよう。

クラウド:活用が広がり、AWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azureなどのメガクラウドが寡占を広げている。リーダーであるAWSは前年比50%近い成長を続け、サービス内容を広げることで先端テクノロジーを簡単に使えるようにしてきている。

 巨大なオンプレミスシステムの象徴であった銀行システムもクラウド化が進む。たとえば三菱UFJファイナンシャル・グループは2020年までに全システムの4分の1をAWSに移行するという。クラウドのインフラとしての位置づけや価値は今後も拡大を続け、それらの活用はデジタルトランスフォーメーションにとって重要度を増す。

モバイル:インターネットと共に、仕事や生活になくてはならないものになった。超高速化と低遅延化を実現する5Gによって、新しい活用分野が生まれ、さまざまなユースケースが広がっていく(『5Gがもたらすデジタルトランスフォーメーション』参照」。日本では2020年の商用化を目指しているが、米国では既に、2018年10月にベライゾンが、同年12月にはAT&Tが限定的ながらサービスを開始している。

エッジコンピューティングが広がる

 こうした動きの中で、エッジコンピューティングの活用も広がっていく。IDCは、「2022年までに、40%の組織がクラウドの活用にエッジコンピューティングを含むようになる」としている。

 5Gによって、モバイルネットワークのスピードは飛躍的に速くなる。だが、端末からクラウドまでのネットワークを考えると速度は制限され、定常的に超高速な通信を実現することは難しい。レスポンスタイムや大量データの伝送といった問題を解決するためは、端末自身や端末とクラウドの間にコンピューティングパワーを準備し、データ帯域の占有やネットワーク遅延を防がなければならない。

 そのため端末自身のインテリジェント化やキャリアが準備する「MEC(Mobile Edge Computing)」など、さまざまな実装が検討されている。エッジとクラウドが独立するのではなく、処理やデータ共有、開発・運用、それぞれの観点から両者の連携が不可欠である。このように5Gやエッジが可能にするネットワークの高度活用が変革を加速させる。