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AIスピーカーやコネクテッドカーへと広がるIoT活用、その進化と課題【第20回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2019年4月15日

 AIスピーカーにBlueToothを使って接続できるデバイスも増えている。照明や鍵、家電リモコンなどが提携先から発売されている。Amazon自身もネットTVの「Amazon Fire TV」をEchoと接続し、音声とTV画面を使ったアプリケーションの実行を可能にしている。

 音声を使ったUI(User Interface)の提供からスタートしたAIスピーカーだが、さまざまな生活におけるAIアシスタントとしてのインテリジェンスが追加されることで今後は、家庭内のデータ収集や機器のコントロールなどスマートホームの中心的存在になっていく。

(2)LPWA(Low Power Wide Area)Network

 これまでネットワークの設営が難しかったデバイスも、モバイルネットワークの広がりによってIoTとしての活用が可能になってきた。しかし、デバイスの台数が膨大な場合、ネットワークコストが課題になる。それを解決するのがLPWA(Low Power Wide Area)Networkだ。

 LPWAは省電力型の通信を実現しており、すでに年間数百円で利用できるサービスが提供されている。デバイスを省電力型にできればバッテリー交換の問題も解決できる。

 LPWAの実装はいくつかある。ソフトバンクがいち早く市場投入したNB-IoT(Narrow Band IoT)は、LTE(4G通信)の基地局を使う方式であり、新たにネットワークを設営する必要がない。これを利用する愛知時計電機はソフトバンクとともに、水道検診の自動化や使用料の見える化など水道管網管理の高度化を目指している。

(3)コネクテッドカー

 AIスピーカーやスマートメーターのようなデバイスは、用途や構成がシンプルである。一方で、用途が複雑で大量のデータ量伝送や応答の迅速性が要求される分野におけるIoTの活用になれば、ネットワークを含めたトータルシステムの構築が必要になる。その代表例としてコネクティッドカーを考える。

 コネクティッドカーは、そのユースケースとして、自動車の予防保守、使用方法に応じた保険、移動のトラッキング、個人にカスタマイズした車内環境の提供、自動運転への情報提供などが想定されている。これらのユースケースは、自動車に限らず、他の機器にも応用できるものだ。それぞれのユースケースを見てみたい。

自動車の予防保守

 自動車の走行距離や、速度、エンジンの回転数と温度、燃料消費量や残量、部品の状況など、自動車自身が持つデータと、温度や湿度、雨などの環境データをモニタリングし、AIや機械学習を使って過去のパーツの技術情報や履歴を参考に故障の可能性を検証する。この仕組みにより、サービス提供者は、パーツや部品問題のデータを入手でき、運転者はより良いサービスを受けられる。

安全運転や用途に対応した保険

 アクセルやブレーキ、スピードなどの自動車データや、センサーデータから運転状況を収集し、運転行動、主な運転場所(高速道路)などを保険リスクモデルと比較することで保険料を算定する。安全運転であれば保険料が安くなる保険モデルを構築できるし、運転状況のフィードバックは運転者の運転改善に役立つ。

貨物移動のトラッキング

 GPS(全地球測位システム)データやセンサーによって貨物室内の温度や振動などのデータを収集する。運送品質の保証や、正確な配達時間の把握、製造準備などにつなげ物流を改善する。

快適、便利な車内環境の提供

 個人の嗜好や選択をクラウドに保管しておき、運転者ごとにカスタマイズした運転環境の設定、温度や音楽、ニュースや移動先の情報を提供する。

 運転中は手が使えないため、AIスピーカーが役に立つ。自動車や機器に指示するための音声UIやAIアシスタントとしての役割が期待できる。この分野でもAlexaやGoogleが自動車メーカーと組んでシェアを伸ばしている。

自動運転

 自動運転車に対して、渋滞などの交通情報、ロケーション情報、地図情報や速度制限、事故や工事による変更情報を提供する。ナビゲーションや自動運転のためのデータアップデート、さらに今後は、他の車や場所に関する情報も提供されていくであろう。