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AIスピーカーやコネクテッドカーへと広がるIoT活用、その進化と課題【第20回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2019年4月15日

IoTのユースケースは複数技術の組み合わせで実現

 コネクティッドカーのように、デバイスからネットワーク、クラウドまでを統合したシステムを実現するためには、以下のようなチャレンジが必要になる。

システムの複雑な組み合わせを実現する

 自動車に搭載されるデバイスやネットワーク、インフラとしてのクラウドおよび、その上で動作するアプリケーションの組み合わせによってプラットフォームが構築される。

 自動車側に、デバイス、センサー、車内ネットワークが存在する。クラウド上には、デバイス管理や、データ収集、データ蓄積、データ分析や予測モデル作成のための機械学習機能が必要である。これらを稼働させるクラウドインフラへの接続にIoTネットワークが必要になる。

 これらを正しく機能させるためには、デジタル上のコピーを作る「デジタルツイン」によるモデリングやシミュレーションの活用も有効である。

IoTでの安定ネットワークの活用

 渋滞などで車が密集した場合でも稼働できるよう、ネットワークとクラウド、エッジの役割分担を考えて実装する必要がある。ネットワークが接続できない場合も想定しておかなければならない。

セキュリティ

 車載部分、ネットワーク、クラウドそれぞれのセキュリティ対策と共に、全体としてのセキュリティ対策が必要である。かつてJeep Cherokeeは、社内ネットワークにつながる機器のパスワードの脆弱性からプログラム改ざんのリスクにつながり140万台をリコールした。自社の製品やサービスに対する被害だけでなく、踏み台として使われるリスクもある。

継続的な進化や追加

 プラットフォーム化やアプリケーション稼働の仕組みによって、継続的に改善・改革し、コネクテッドカーアプリケーションを迅速に実装できる仕組みが必要になる。

 ただし、これらチャレンジのすべてを自社で構築することは難しい。そのためGoogle、IBM、Microsoft、AWS(Amazon Web Services)などの米クラウド大手社は、表2のようなプラットフォームを支援策として提供している。これらを活用することで、自社のデバイスやアプリケーションにリソースを集中できる。

表2:米大手クラウド各社が提供するコネクテッドカーのためのプラットフォーム
ベンダー名サービス名
AWSAWS Connected Car Solution
GoogleGoogle Cloud IoT Core for Connected Vehicle Platform
IBMIBM IoT Connected Vehicle
MicrosoftMicrosoft Connected Vehicle Platform

個々の技術に加え全体アーキテクチャーの検討が重要に

 このようにIoTの領域では、AIスピーカーによるUIの変革やアシスタント機能のように生活を変え、LPWAによってIoT接続対象の裾野を広げ、コネクティッドカーのように新しい製品や機能/サービスを生み出していく。IoTの応用分野は広がる一方だろう。

 企業がIoTの活用を検討する際には、IoTによって実現する価値とゴールを考え、それに必要なテクノロジーの検討を進める必要がある。テクノロジーの範囲は、デバイス、ネットワーク、クラウドの連携、セキュリティと幅広く、それぞれの知識が求められると同時に、全体アーキテクチャーの検討が重要である。

大和敏彦(やまと・としひこ)

 ITi(アイティアイ)代表取締役。慶應義塾大学工学部管理工学科卒後、日本NCRではメインフレームのオペレーティングシステム開発を、日本IBMではPCとノートPC「Thinkpad」の開発および戦略コンサルタントをそれぞれ担当。シスコシステムズ入社後は、CTOとしてエンジニアリング組織を立ち上げ、日本でのインターネットビデオやIP電話、新幹線等の列車内インターネットの立ち上げを牽引し、日本の代表的な企業とのアライアンスおよび共同開発を推進した。

 その後、ブロードバンドタワー社長として、データセンタービジネスを、ZTEジャパン副社長としてモバイルビジネスを経験。2013年4月から現職。大手製造業に対し事業戦略や新規事業戦略策定に関するコンサルティングを、ベンチャー企業や外国企業に対してはビジネス展開支援を提供している。日本ネットワークセキュリティ協会副会長、VoIP推進協議会会長代理、総務省や経済産業省の各種委員会委員、ASPIC常務理事を歴任。現在、日本クラウドセキュリティアライアンス副会長。