• Column
  • 大和敏彦のデジタル未来予測

AIスピーカーやコネクテッドカーへと広がるIoT活用、その進化と課題【第20回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2019年4月15日

前回の『EUの「GDPR(一般データ保護法)」が示すデータの光と影』では、データについて議論した。今後も、スマートフォンやアプリケーションによって、さまざまなデータが収集され、利便性や機能の強化、新サービスへと活用されていくだろう。さらに、さまざまなモノがネットワークに接続されるIoT(Internet of Things:モノのインターネット)が広がれば、収集されるデータは一層増え、高度な活用につながっていく。今回はIoTの現状と課題を考えてみたい。

 IoT(Internet of Things:モノのインターネット)は、モノをネットワーク接続型に変え、データを収集・分析し、分析に基づいた判断や動作によって、製品や仕事を変え、新サービスを創出し、生活を変えていくための仕組みである。

 センサー技術や認識技術、ネットワーク、クラウドなどのテクノロジーの進化により、これまでデータを収集できなかった領域が、データ化や見える化の対象になる。高度な分析、AI(人工知能)や機械学習のようテクノロジーと組み合わせることで、より高度なデジタル活用が可能になる。

IoT領域のベンチャー投資は2018年に280億ドル

 IoTの領域では多数のベンチャー企業が生まれ活躍している。その分野は、IoTプラットフォームのほか、ライフスタイルや、フィットネス、ドローンやロボット、スマートホーム、自動車など、さまざまだ。

 ベンチャー分野の調査会社であるVenture Scannerによれば、IoTベンチャーへの投資額は2018年、過去最高の約280憶ドルを記録した。前年度比94%増の急成長で、過去5年間の平均成長率を見てみても54%と高い成長が続いている。

 2018年に巨額の資金を集めた企業としては、約12.8億ドルを集めた電子たばこ大手の米JUUL Lab、11億ドルを集めたネットワーク接続型のスマートビルディングソリューションを提供する米View、約8億ドルを集めたAI と人間型ロボットを開発する中国UBtech Roboticsがある。

 こうしたベンチャーだけでなく、大企業でもIoTを積極的に活用するユースケースが増えてきている。

 今回はIoTのユースケースを、(1)ホーム分野のAIスピーカー、(2)屋外でのデバイス活用のテクノロジーであるLPWA(Low Power Wide Area)Network、(3)コネクティッドカーを取り上げ、IoTの進化と課題を見ていきたい。コネクテッドカーは、既存機器のインテリジェンスとネットワーク機能を高め、IoTとして高度なデジタル化を図る例である。

(1)AIスピーカー

 米調査会社Statistaによれば、AIスピーカーは2018年、米国家庭の20%強に浸透している。「Amazon Echo(Echo)」がリーダーであり、競合として「Google Home」がシェアを伸ばしている。AIスピーカーは、Wi-Fi経由でインターネットに接続するため、Wi-Fi環境を持つ家庭なら簡単に設置できる。

 Echoに搭載される音声サービスが「Alexa」で、「スキル」と呼ばれる知識を増やすことによって、できることが増えていく。スキルは企業や個人が開発しており、2018年の時点で、その数は5万を越えた。スキルの増加スピードは速まっており、最近では121日間で1万も増えたという。

 表1は、スキルが提供されている分野である。実際の家庭での使われ方としては、一般的なQ&A(質問と回答)や、天気の問い合わせ、音楽を楽しむ、タイマー通知、予定やTo Doの通知などが上位になっている。Amazonは、Alexaの他社への提供や提携にも積極的で、これまでに3500ブランドから2万デバイスが発表されている。この提供・提携の速度も高まっている。

表1:Amazon Alexaのスキル分野(2018年2月時点のAmazonのデータより)
順位分野割合(%)
1Game、Trivia & Accessories25
2Education & References13
3Lifestyle7
4Music & Audio7
5Novelty & Humor7
6News6
7Productivity5
8Travel & Transportation4
9Sport3
10Smart Home3